Meshuggah/I  (ASIN:B0002JEO74)

1曲入りEP。だがその1曲「I」が21分ある、と言うクレイジーな作り。そして、その内容は聴いていて顎が落ちるくらいグレイト。メシュガーはやっぱり神でした。
常軌を逸したへヴィネスと暴力性、冷酷無比な非人間的演奏、マトモにカウント出来るリズムの方が少ない不規則変拍子の嵐、と言う彼ら以外の何者でもないバンドサウンド、強烈な絶叫と咆哮が21分間の中にぎっしり詰め込まれている。が、冗長感は皆無。あっと言う間に、或いはあまりの凄まじさに呆然としている間に、曲が終わってしまうような感覚すらある。イントロのリフとバスドラ乱れ打ちからいきなり聴いているこっちまで脳内の血液が沸騰しそうになるテンションの高さ。
「I」は、今までの彼らのスタイルを21分間で総括したような曲だと思う。2ndのスピードと破壊力、3rdの硬度と非人間性、4thの粘度とヘヴィネスが入り乱れて現れる様には圧倒される(1stは未聴なので、本作と1stとの関連性は解らないが)。圧倒されると言うか、聴いていると脳内麻薬出そうになる。謎の中近東風フレーズ、ドラムかと思うくらい低く重い音で刻まれるトライバルなリフ、炸裂する異次元ギターソロ、明らかに狂っているのに何故かグルーヴィに聴こえるリズム、怒涛の突進、唐突に訪れる不気味な静穏、破滅を連想させる不協和音……などなど、一つ一つの要素が恐ろしく研ぎ澄まされていて、極端にダークでモノクロームな手触りが異様に格好良い。
1曲が21分、と言うのはまあ通常では考えられない長さではあるが、聴いていて時間の長さを感じないと言うのも凄い。あまりにも高密度で情報量の多い音の塊を叩き付けられるために聴いていて時間感覚が狂わされるから、と言うのもあるが、曲全体の流れと言うものがそれなりに考えられていて起伏のある作りになっており、耳を惹くパートを効果的に配している事が大きいと思う。
前作「Nothing」で聴く人を底なし沼に沈めるような暗黒グルーヴを極め切ってしまったため、今度はきっと速くて即効性のある格好良さを押し立てて来るだろうと思っていたし、それは数ヶ月前に「I」の一部を視聴した時にも解っていた事だが、ここまで解り易い格好良さと強靭な完成度を持ったものを出して来るとは思わなかった。今後、この「I」が彼らの代表曲と言われる事もあるかも知れない、その位の素晴らしさ。エクストリームな音楽が好きな方なら必聴の内容だと思う。


なお、dz-015さんに俺の感想よりもずっと解りやすくまとまったレビューがあるので、興味のある方はそちらも是非お読み下さいませ。
明日はこのEPと一緒に届いたCandiriaの新譜の感想を書きますよ。こっちは結構普通になったなあ。