Soulfly/Dark Ages  (ASIN:B000AA7D8W)

前作「Prophecy」は、これまでになくワールド・ミュージックの要素を取り入れた内容だった。ボサノバ、ガムラン、レゲエ、フラメンコ……と言った音楽を凶悪なバンドサウンドの隙間に差し挟み、静と動、聖と俗の対比を描き出していた。それに比べると、本作は(アルバムタイトル通り、と言うことなのか)随分モノトーンで、怒気一色に塗りつぶされたかのようにゴツゴツした手触り。気合いが入りまくった一音一音の強度と鋭さ、猛り狂いながらもどこか高潔な空気をまとうマックス・カヴァレラの迫力は強烈極まりない。
血を吐くかのような咆哮と地を揺らす巨大なリズム、怪しげなトーンでかき鳴らされる呪術的なギターフレーズ、バンド名を冠した深遠なインスト#15「Soulfly V」の存在など、このバンドが持っている他に無い特徴は、勿論今まで通り。だが、本作はスラッシュメタル回帰とも思える路線が採られており、刺々しい緊張感を持って突っ走る曲が多く収められている、と言うのがこれまでのアルバムと大幅に異なるところだと思う。前作までで辿り着いた境地を活かした上でいま再びSoulfly流のスラッシュメタルを目指している、と言った具合で、前作がやや拡散傾向にあったのと好対照を成すかのように、次々と撃ち放たれてゆく2ビートとガリガリしたリフと鬼神のような咆哮のコンビネーションはめちゃめちゃ格好良い。ジャングルの奥地に住む部族の密儀のような、怪しい生命力に満ちた土着的リズムは以前ほど前面に出ていないものの楽曲の内部より深くに取り込まれているような感じで、前作から一年そこそこと言う短いインターバルで発表されたにしては非常に良くアレンジが練られていると思う。また、全体的な音作りも、潰れる寸前にまで歪んだ音で重低音を強調していたものが幾分硬質でシャープなものになっていて、何と言うか前よりヘヴィメタルっぽい音になっているのが良く合っている。
前作以上に前面に出て来るリードギターの存在感も非常に大きい。時としてスタンダードなヘヴィメタルの作法に基いた泣きを存分に聴かせ、またある時はラテン音楽の熱く物憂げな空気を送り込み、別の時は楽曲全体を更に加速させるアクセラレータの役目を果たし、と縦横に活躍するギターソロが大抵の曲に配されていて、これがまた楽曲のインパクトを何倍にも増す効果を果たしている。
ソロあり突進2ビートありミドルテンポあり、と一曲一曲で見てもアルバム全体の構成を見ても、とてもバランスが良い。#3「I and I」や#7「Frontline」や#13「Fuel the Hate」など、これまでのグルーヴ感とトライバルな要素とスラッシュメタルが見事に融合した優れた曲がある一方で、サビのクリーンなコーラスが非常に印象的な#「Innerspirit」、スラッシュと言うよりハードコアパンクっぽい#5「Molotov」辺りの曲も面白い。15曲で66分と詰め込み過ぎなために全部聴き通すと疲れてしまう、と言うのは彼らのアルバムに一貫した欠点ではあるが、かと言って本作には目立つ中だるみがあるわけでもないし、終曲の#15「Soulfly」で10分かけてゆっくりチルアウトしてゆくのも良い味になっている。音に滲む風格や威厳となりふり構わず突っ走る攻撃性が高いレベルで一体化した非常に充実したアルバムであり、やはりSoulflyは唯一無二だということが改めて確認出来る力作。