Downyの4枚のアルバムについて

本来今日はDownyのライヴアルバム+DVDを買うという大きな目標があったのだけれども、忌々しい台風のせいで家の外から出られず、買えないのがたいへん腹立たしい。仕方ないので、その代償行為としてDownyが今までに発表した4枚のアルバムを総ざらいする事にする。まあ、こないだボラで青木氏のイカれたギタープレイを改めて目にした事もであるし、タイミングとしてはちょうど良いのかも知れない。


ブレイクビーツっぽい人工的な匂いのする硬質なドラム、超重量級のベース、繊細なアルペジオもベースとユニゾンする陰惨リフもシューゲイザーな轟音ノイズもやってのけるツインギター、美しい声ではあるが不安定なメロディと歌い方はどう考えても神経症気味なヴォーカル。Downyの音楽を構成する要素は、概ねこんな感じ。道具立てはあくまでも今様で、土台にはポストハードコアやブリストルサウンドRadioheadがあるのは間違いないが、その一方でやはりクリムゾン的な何かが根深く巣を張っているとしか思えないところも多い。なので、まあ機会があるたびに言っている事だが、北欧ヘヴィシンフォ/ヘヴィサイケがツボに来る人は普通に聴ける気がするし、その一方でThe Mars Volta以降の流れと一括りにして捉える事も出来なくはないと思う。



■無題 (2001年/ASIN:B00005HYCU)
1stアルバム。以降のトータルアルバム的な空間構築力、音の広がりや奥行きの深さはここではさほどでなく、抑えるところでは徹底的に抑えてここぞというポイントで一気に爆発させる、と言うスタイルもまだ完成していない。#10「猿の手柄」のような明るくキラキラした曲があったり、ラウドロック的な#5「左の種」があったり、と曲のタイプにしてもリフでゴリ押しするだけでなく幅が広く、異様なところは随所に見えるもののまだ普通のロックバンドの範疇内に留まっている。だが、初期衝動を加工し過ぎずにぶつけるパンキッシュな力強さ、不純物の多いノイズ成分の荒々しさ、得体の知れないダークな狂熱は本作が4枚中一番強いとも思う。3rdでリメイクされている「酩酊フリーク」は、個人的にはこの1stに収録されているバージョンの方が好き。


■無題 (2002年/ASIN:B0000641LQ)
2ndアルバム。自分がDownyを聴いたのは本作が初めてだったのだけれども、とにかく衝撃を受けた一枚。冒頭の#1「葵」の疾走感が凄まじく格好良く、#3「黒い雨」のあまりに鮮烈な静と動の交錯にも尋常でないインパクトがあった。抑制と暴発を自在に操りつつ、刃物のように鋭いドラムと凶悪なベースリフの執拗な反復によって曲を形作るスタイルが確立されて、暗鬱なヘヴィネスとサイケデリックな浮遊感の融合が異様極まりない音風景を描き出す。音数はかなり多く、ギターノイズも音像いっぱいに広がっているのに、音と音の隙間を聴き手に強く意識させるような独特の音作りと、ギターのどこか日本的な侘しさと静けさを感じさせるフレーズが寂寥感を呼ぶ、傑作。眩暈を起こしそうになるほど覚醒的。


■無題 (2003年/ASIN:B00008VH69)
3rdアルバム。4枚中もっとも静かで、そして少々地味なアルバム。1stのような楽曲単位での良さも、2ndのようなダイナミズムも薄く、ある一定のトーンを保って淡々と曲が進行するような、聴いているとどんどん気分が沈み込んで行ってしまうような手触りがある。そういう意味では4枚のうちで最もディープな憂鬱さをたたえたアルバムである、と言えるかも知れない。トリップホップの影響が色濃い#1「鉄の風景」、Tortoiseのような#8「月」も良いが、切なく儚げなワンフレーズがずっと繰り返される#3「抒情譜」、そしてメロディが本作中で最も良く、物憂げなベースラインがどこか艶やかな#7「苒」辺りが気に入っている。メロトロンめいたギターワークは何とも美しいが、非常に退廃的で暗い。


■無題 (2004年/ASIN:B00028XD18)
4thアルバム、にして実質上のラスト。手触りとしては1stの多様性を2nd、3rdで培った空間表現でブーストした、と言えなくもないつくり。アルバム全体の統一感はしっかり維持しつつ再び様々なタイプの曲が収められているし、メロディも幾分解りやすくなった。従って今までで最もキャッチーだが、それと同時に今までで最もブルータルにしてヘヴィメタリック。凶暴そのもののバンドサウンドが完全に統制を保ったままで荒れ狂い空間を捻じ曲げる様は見事にクリムゾン的でありながら、正真正銘のオリジナリティを備えている。欝ダンスロックの#4「サンキュー来春」、とんでもなくヘヴィかつ捻れたリフを持つ#1「弌」は突き抜けた名曲だが他の曲も全部優れており、こんなのを作ってしまったら活動休止になっても仕方ないかも知れない、と思えるくらい凄まじい。



何にせよ、とても好きで、なおかつ思い切りお勧め出来るバンドの一つなわけです。興味のある方は、やはりまずは4thアルバムを聴いてみれば良いんではないかと思う。
公式サイトはこちら。試聴できたりPVを観られたりするので、是非どうぞ。