Circus Maximus/The 1st Chapter  (ASIN:B0009ML238)

ノルウェープログレメタルバンドの1st。プログレメタル、と呼ばれるバンドはその殆ど全てが大なり小なりDream Theaterの影響を受けているわけだけれども、このバンドに関してはもう影響が出ているどころではなく完全なフォロワー。1st〜3rdまでのDream Theaterの流儀を完全になぞり、基本的にそこから逸脱しない。が、にも拘らずと言うかだからこそと言うか、本作は非常に優れている。
まず何が良いかと言うと、メロディだと思う。オープニングからして#1「Sin」の柔らかくもドラマティックなメロディライン、続いて#2「Alive」の明るいが緊張感のあるサビ、とどちらも歌が非常に強力。様々に曲が展開しながらもブレがなく、複雑な構造の曲が多いにも拘らず一度聴けば耳にはっきりと残るメロディは、ポップとさえ表現しても構わない程聴きやすい。そんなメロディを軸にしながらも楽器隊の自己主張もじつにバランスよく組み込まれていて、しっかりとしたヘヴィネスが備わっている……つまり、がっつりヘヴィメタルしているのも何とも嬉しい。ヴォーカルがこれまた若き日のジェイムズ・ラブリエを彷彿とさせるような気品と柔らかさに満ちた堂々としたパフォーマンスを全編に渡って繰り広げており、どの角度から見ても隙と言うものが殆ど見られない。唯一インストの#4「Biosfear」は、楽器隊の演奏だけではネタ元であるところのDream Theater程のオーラが出ていない事が露わになっているので正直不要ではと思ったが、それ以外は本当に隙なく仕上げられていると思う。ユーロロック的なキーボードワークがいい味を出しているバラード#5「Silence from Angels Above」、細かく刻まれるヘヴィなリフとどこか切ないサビメロ、中間部の疾走パートの対比がとても印象的な#6「Why Am I Here?」、牧歌的な解放感のある#7「The Prophecy」と後半の曲もどれも良い出来だし、#3「Glory of the Empire」、#8「The 1st Chapter」はどちらも大曲ではあるものの起伏がはっきりしていて冗長さを感じさせない。この2曲がアルバム全体の流れをメリハリがあるものにしているところもいい。
完成度、と言う意味では1枚目のアルバムにしてこれ以上ないほどの高さ。全くもって堂々とした居佇まいで、フォロワーに良くあるようなどこか遠慮したようなところが全くないのも、とても良いと思う。結局のところDream Theaterのようになる事自体が目的と化しているようなところがあるフォロワーがちらほら居るのに対して、このバンドはあくまでもDream Theaterの手法を使うのは良い楽曲を作るための手段である、と言う姿勢が非常に明確であり、そしてそれ実際に良い楽曲が提示出来ている。素晴らしい事だと思う。
ただ、その一方で、このバンドとしてのオリジナリティが今のところ観られない、と言う一点において物足りなさを感じるのも事実。本作には楽曲の純度を上げるために独自性の追求は敢えて排除しているかのようなところがあり、そしてその目論見は実際成功していると思うが、ここまで出来るのならもっと彼らならではの要素も、とも思う。なので、次作ではこの完成度の高さにプラスして彼ら独自の魅力を提示してくれる事にも期待したい。非常に高いハードルだが、意外とあっさりとやってのけてしまうのではないか、と言う気もする。