Byzantine/And They Shall Take up the Serpents  (ASIN:B0009VNBK6)

アメリカのメタルコアバンド、2枚目のアルバム。ちょっと調べてみたら所属レーベルのProstheticはLamb of God、そしてRefluxがいるのか……確かに、典型的なメタルコアのスタイルとはやや距離を置き、より攻撃的な姿勢の強い独自路線と言う意味では通ずるところがあると思う。
北欧メロデスのメロディ感覚やリフ遣いには殆ど頼っていない。その代わり、全編でリードギターが弾き倒していて、大概の曲にソロがあるのが印象的。また、どの曲もやたらトリッキーな仕掛けが施されていて、細かい展開や変則的なリズムを多用し、要所要所では2ビートで突っ走ったり、その逆にダウンテンポで地面を抉るような重低音を撒き散らして、曲の起伏を大きく付けてダイナミズムを生み出してみせる。ピアノやアコースティックギターを使って不穏なムードを強調したり、リードギターの奏でるフレーズも全体的にいかにもなメタルのセンスとは少々離れていて随分とエキセントリックな手触りだったり、とやたらケレン味が強いテクニカルラッシュな作り。だが、頭でっかちにならずに音にも楽曲にも説得力が備わっているのは、バンドサウンドがしっかり攻撃的で刺々しく、何をやっていても出音にドスの効いた肉体性が備わっているから、種々のトリッキーな仕掛けがただの飛び道具にならずに楽曲のフックとして機能しているからだと思う。強固なバンドサウンドを土台にした上で、良い意味でハッタリを利かせている、と言う印象。ミドルテンポ以下の速さになった時に迫力が落ちる、と言う欧州や北欧モノにありがちな弱さがない辺りは、やはり北米産と言う事だろうか。
10曲48分と言うのは最近のこの手のものしてはやや長めの構成だが、楽曲はいずれも優れていて長さは全く感じさせない。特にアルバム中盤の曲が良く、明るめのリフを軸に変幻自在に曲が展開してゆく#3「Jeremiad」、リフはオーソドックスなメタル寄りだが曲の中間に胡散臭げなアコースティックギターを配し、その後には最近のクリムゾン風ソロが炸裂する、と言うアルバム中でも特にフリーキーな#4「Ancestry of the Antichrist」、ピアノの物悲しげな響きからいきなりMeshuggah的な凶悪圧殺マシンビートが撃ち出される#6「Five Faces of Madness」辺りはフックに溢れていてやたらと格好良い。どの曲も、次々と曲が展開してゆくので少々忙しないが、場面転換をするタイミングやリフの繋ぎが非常に上手く、またソロが楽曲の核としてがっちり曲を引き締めているので散漫な印象はない。アグレッシヴだが人を寄せ付けないほどでもない、と言う比較的聴きやすい声質でがなり立てるヴォーカルの取っ付き易さともあいまって、複雑かつなかなか間口の狭い音楽性ながら聴き手の集中力を切らさずに一気に聴かせてしまう辺り、曲作りの勘所を抑えていると言うか、とにかく巧い。ラストの#10「Salem Ark」のStrapping Young Lad色の取り入れ方なんかにも思わず唸らされる。
練り込まれた曲作りの巧みさやまだキャリアの浅いバンドとも思えないほどの引き出しの多さもあれば、ガツガツと聴き手に詰め寄って来る節操のない押しの強さもしっかり持っている、非常に魅力的な一枚。かっちりと整合感のある音作りは完全にヘヴィメタルのそれだが、いわゆるメタルコアとは(カオティックコアの方面とも)完全に一線を画す音楽性、斬新かつ意外性に満ちたアプローチは文句なしに格好良い。お勧め。