短い感想その3:素肌にダブは男の本懐

ダブはまだ聴き始めたばかりでそれについて説明する言葉も良い聴き方も解らないが、去年の末から今年にかけて聴いたものの中から幾つか短い感想を書いてみたい。


Rhythm&Sound/See Mi Yah  (ASIN:B0007DHOIQ)
ドイツのダブユニット、2ndアルバム。あまり派手に音を飛ばす処理をしているわけでもないし、ほぼ全曲ヴォーカル曲だが歌い方も声も恐ろしく冷えているのでとても抑制的。生演奏と打ち込みが8:2くらいのトラックも冷え冷えとした緊張感を湛えていて、クールを通り越して荒涼とした気配すらある。似たようなテンポの曲が多く、ある音が複数の曲を跨いで使われていたり、別の曲が同じトラックを使っていたりするので、ミニマルでなにやら呪術的な雰囲気、聴き手をずるずると眩惑させるゆく力も持っている。どこで曲が終わったか分からなくなったりもするが、中毒度はかなり高い感じ。



Dub Trio/Exploring the Dangers of  (ASIN:B0002ZUIQO)
名前の通り3ピースのインストダブバンド、1st。クラブミュージックも通過したような踊れる感じの曲が多く、オーソドックスなレゲエからドラムンベースっぽいリズムのもの、サイケデリックなギターノイズがゆっくり立ち上がってゆくポストロック風味のもの、曲にそれぞれバリエーションがあって面白い。スタジオ録音が5曲+ライヴが3曲と言うちょっと変則的な構成だが、前者で聴ける洗練された演奏とライヴでの熱い演奏には結構な隔たりがあって聴き比べるのが楽しい。いずれにせよ、漂う音の広がりや奥行きを聴かせると言うより、クールなリズムを楽しむ感じのアルバムなのだと思う。チャカチャカした刻みもうっすら拡がって空間を埋めてゆくノイズもこなすギターの音が良い感じ。



Sub Oslo/Dubs in the Key of Life  (ASIN:B00005L8IR)
テキサスの、こちらもインストダブバンドの1stアルバム。極太かつ超ヘヴィなリズム隊が叩き出す巨大なうねり、意識を歪めるダブ処理、ピアノなども取り入れたアンビエント色の強い美し過ぎるウワモノの鉄壁のコンビネーション。10分以上ある曲が殆どで、なおかつゆったりしたテンポの演奏だが緊張感が尋常でなく、低音部のリズムと高音部の深く揺らめく音の対比が脳細胞を強烈に揺さぶってくれる。反復に反復を重ねてゆっくりと展開してゆく曲には、当てもなく意識の底を彷徨うようなダークでサイケデリックな手触りがあり、時折それが美しいメロディと音響へ繋がって視界が開けるところなどは、音のタイプは全く違うがIsisなんかを連想したりもした。どこまでもディープで格好良い、大推薦盤。2nd「Rites of Dub」も良かった。



ダブセンスマニア/Disappearance  (ASIN:B0006GAZ6W)
1stアルバム「Appearance」のダブミックス盤。「Appearance」の方は聴いていない(レーベルゲート2だったので。あれはうちのPCで読み込んでくれない)のでそちらとの違いは解らないが、このアルバムの音はものすごく鋭い。音の一つ一つが非常に硬質で、それでいて残響の部分は広がりがあって、割と明るい曲を演奏していても明るいイメージよりも切迫感の方が先に来る。が、たまに現れるコーラスやピアニカの音には温もりがちゃんとあって、どの曲もはっきりメロディラインがあるので聴きやすいと思う。何と言うか、音を一つずつ拾いながら聴いて行った時に感じる鋭さの割に、全体的にはマイルドで入って行きやすいところがあって、何を聴こうか迷っている時に何気なくこれを選ぶ事が多い。


Sub Osloは特にお勧めです。あれは本当にいい。