Machine And The Synergetic Nuts/Leap Second Neutral  (ASIN:B0006O0DHA)

日本のジャズロックバンドの2nd。Dr、Ba、Key、Saxと言う編成だが、多くの曲でギターが参加してロック的な雰囲気を作り出している。
前々から名前は聞いていたけれども音を聴く機会は今までなかったので、本作で初めてこのバンドの音を聴いた事になるが、クールで醒めた都市的な空気をたっぷり含んだプレイの応酬とラウドで血の気の多いグルーヴが共存する楽曲の格好良さが見事にツボだった。ジャズロックカンタベリーサウンドと言うものを多くは聴いていない自分にもそれとなく判るくらい、そう言った括りをされる音楽に良く出て来るようなフレーズや展開はあちこちに聴かれる一方で、ダンスミュージックをしっかり意識していると思える図太くファンキーなリズム、ほんの一匙仕込まれたエレクトロニカの要素はとても現代的だと思う。
スピーディでタイトなリズムにオルガンやサックスが被さって焦燥感を煽る#1「M-B」、人力ドラムンベース的なリズムがトップギアで2分半疾走する#2「Monaco」と言う序盤からしてテンションがやたら高く、その熱に呑まれて一気にアルバムが終わるまで聴かされてしまう感じ。ノスタルジックなベースライン、オルガンやピアノやサックスが絡み合って切ないメロディを奏でながらリズムはどこまでもダンサブルな#3「Trout」、クールなファンクから始まって徐々に演奏のヴォルテージが高まり、最後にはギターが出てきて思い切りハードな曲調になる#4「Neutral」、本作中で最も入り組んだリズムが何となしにユーモラスな変態ファンクの#5「Stum」、一瞬ギターと聴き違えるほどに目一杯歪めたオルガンによるヘヴィで尖ったリフがハードロック的格好良さを醸し出す#7「Solid Box」、トランシーなキーボードとサックスの音色、非常に細く畳み掛けるドラムが浮遊感を生む#8「Texas」、メロトロンの感傷的な響きが何とも心地良く、最後にはオルガンによるノイズの壁の後再び「M-B」のイントロへと向かう、と言う仕掛けも持つ#9「Normal」と、それぞれに異なる表情を持つ9曲のいずれも強い存在感を放っている。インストのみの作品は、覚えやすさや取っ付き易さと言う面が少々弱くなりがちだが、本作はどの曲にもフックの効いたメロディがちゃんとあって、一曲終わって次の曲を聴き始めた時に、さて前の曲はどんなだったかと首を捻って聴き返すような事が無いのがいい。
心地良く歪んだオルガンを主体にしつつ多彩な音色を操るキーボード、流れるようなサックスの響きも魅力的だが、本作を聴いて一番印象に残るのはやはりリズム隊。えらくファットな音でぐねぐねと蠢くベース、手数の多さ細かさと荒々しくさえあるラウドなヒットの両方が耳に残るドラムの音は、いずれもガツガツと聴き手に食いついてくるような、良い意味で下品なもの。リズム隊の叩き出す太いグルーヴがジャズロックの難解さや捉えどころのなさを上手く拭い去っている、と感じた。
頭や神経に作用するスリリングな複雑さと、腰から下に直接響くリズムの気持ち良さを同時に引き受け得る刺激的なアルバム。ジャズロックプログレッシヴロックの括りに囚われない間口の広さとキャッチーさを備えていると思う。お勧め。