The Back Horn/キズナソング  (ASIN:B0006TPGAE)

2曲入りマキシシングル。
表題曲は、ストリングスを大々的に配し、壮大なスケール感を持たせたバラード。もっとも、バラードと言ってもメロディ遣いにはいかにも彼ららしい翳りと熱とが見えるし、弦楽器の音が非常に分厚いので全体的な音の強度が落ちているというわけでもない。また、何よりベースがいつになく目立つような作りになっていて、あまり目立たないギターの代わりに殆どリード楽器のようにメロディを奏でるベースの格好良さが全編で際立っている。他にも、「誰もが皆幸せなら/歌なんて生まれないさ/だから世界よもっと鮮やかな悲しみに染まれ」とあっさり言い放つ冒頭の一節、そしてこれまでの彼らの曲が持っていた直情的なヘヴィネスや攻撃性はまた異なり、奥行きのある暴力性を曲に付与する弦楽器の壁(演奏からしてそうなのか音作りがそう聴こえさせるのか、弦楽器特有のたおやかさは薄い)、とインパクトの強いパートが多い。弦楽器を入れたバラードだからと言って路線が大幅に違うかと言えばそうでなく、むしろ非常に彼ららしい硬さ、脆さ、柔らかさを内包した曲だと思う。「夢の花」「コバルトブルー」「キズナソング」とかなり触れ幅が大きい去年からの3枚のシングルが、来月発表されるアルバム「ヘッドフォンチルドレン」にどのように取り入れられるのか、とても楽しみ。
カップリングの#2「夜空」は、何だかビーイング系の女性ソロシンガーの曲にありそうな……と言うか、ズバリ小松未歩が書きそうなサビメロが妙に印象的。カップリングらしいと言って良いのか、スケール感で言えば表題曲に二歩も三歩も譲る曲だが、メロディとヴォーカルの相性はすごく良い、魅力的な小曲(短い曲ではないが、小ぢんまりと纏まっているのでそういう表現が適当な気がする)。Jポップ的なものを貪欲に取り込んで血肉にして来たこのバンドの特徴と強みが十分に表れた曲でもあると思う。