トルネード竜巻/Fairview  (ASIN:B0006GB0BQ)

フルアルバム「アラートボックス」からおよそ半年振り、5曲入りのミニアルバム。曲数が少ないので、一曲ずつ感想を言ってゆきたい。
表題曲でもある#1「Fairview 〜眺めのいい景色」は落ち着いたリズムでたゆたうようなヴォーカルを聴かせる曲で、いかにもこのバンドらしい妙な捻りの聴いたサビはとてもキャッチー。そのメロディと言いバックでギターとキーボードが奏でるノイズと言い、一筋縄ではいかないつくりなのは相変わらずながら、より普遍的なポップスに近付いているような印象がある。#2「アンサー」は緩やかなディスコビートとヴォーカルの優しい声との対比が抜群に気持ち良い曲で、本作中で一番気に入っている一曲。どの曲にも言える事だが、何とはなしに「アラートボックス」やそれ以前に聴けるものより歌は巧くなっているような気がする。#3「ヴィンセント」は、水の中でゆらゆら漂っているような浮遊感のあるギターとジャジーで変則的なリズム、中間のエレピ音によるソロ、呪文のようなヴォーカルがこれまたいかにもらしいと言うか、プログレッシヴロック寄りで面白い。ただ面白いだけでなく、ちゃんとポップな仕上がりになっている辺りは流石だと思う。
以上が新曲で、残り2つは過去の曲のリアレンジ。#4「夜明けのDAWN (恋にことばプリプロダクションアレンジ)」はプリプロダクションと名がついているようにメロディはまだちゃんと固まっていない感じで全体的に曲としては未完成な感じだが、その分思い切りうねるリズムが原曲(?)よりもヘヴィなのが面白かったり、バックで鳴っているキーボードとギターがずっとカラフルでノイジーだったりして全く別の曲のような感じ。#5「さあゆこう〜サンクトペテルブルグのリアレンジの風〜」の方は、原曲のポジティヴでとても明るいイメージはそのままながら、バックで鳴っている変な音が大幅増量されていたりベースが強調されていたりするので、これまた違う曲に聴こえる。この二曲は元の曲と聴き比べてみてもかなり面白く、原曲とリアレンジの差に見られる遊び心が楽しい。
前半二曲はポップ寄り、後半三曲は実験的なところが見え隠れ、と割とはっきり分かれているが、基本的にどの曲もキャッチーだし、それに暗いところがないのでさらっと聴けるのが良い。あるようでなかなか無い音楽性、良い意味で無駄に凝り倒したポップスは健在。ぼんやり聴くのにも、考え込みながら聴くのにも良いが、いずれにせよ日の光を連想させる明るさと優しさがどの曲にもある。