Opeth/Lamentations:Live at Shepherd's Bush Empire 2003(DVD)  (ASIN:B000127ZEG)

タイトル通り、「Deliverance」「Damnnation」発表後の2時間に渡るライヴを収録したDVD。1時間ほどのレコーディングドキュメントも収められている。ライヴは二部構成で、前半は「Damnnation」を曲順通りに再現+「Harvest」、後半は「Deliverance」と「Black Water Park」からヘヴィな曲からの選曲。レトロで耽美なキーボードの音色が重要な役割を果たす「Damnnation」の曲、及び後半最後の「A Fair Judgement」ではサポートプレイヤーとしてSpilitual BeggarsのPer Wibergが参加している。彼はバックコーラスも担当しているが(普通に巧い)、キーボード遣いも立ち姿も、5人目のメンバーとして何ら違和感が無かった。
前半。絶望的な冷たさの中に暖かみを感じるジェントルな歌声、Per Wibergによるミステリアスなキーボード、グルーヴィなリズム隊、そして静かに悲しみを煽るギター、いずれも虚ろさと暗さに満ちていたスタジオ盤よりもずっとエモーショナル。表情に時折笑顔が見られたり、アルバムの曲順通りに演奏しているのに一曲ごとに穏やかな声で次の曲を紹介するえらく律儀なMCのせいもあって、当たり前と言えば当たり前の事だが「生身の人間がちゃんと演奏していたのか」と言うのが実感出来る。ソフトな方向に寄った「Damnnation」の曲を通しで聴くのは流石にダレるんではないかと観る前は思っていたが、抑制気味ながらやはり強力なリズム隊のせいか、ダレる事も無く聴ける。また、「Closure」はインストにより重点を置いた再アレンジが施されていて、サイケデリックなキーボードとギターの絡み合いが途中から思い切りヘヴィになるのがすごく格好良かったのもライヴ前半の中でアクセントになっていて良かった。
後半。ヘヴィな曲を叩き付ける圧倒的なパフォーマンスにはもう観ていてただ茫然とするしかない感じ。デス声と前半で見せたノーマルな歌い上げを全く同一線上のものであるかのように(と言うか、実際その通りなんだと思うが)使い分けるヴォーカルや、激しくヘッドバンギングしながら超ヘヴィな歪みを吐き出すベースとツインギター、常軌を逸した手数の一つ一つがめちゃめちゃ鋭くて気持ち良いドラム。揃って尋常でないプレイヤー達が紡ぐ名曲の数々が悪いわけがなく、殊に「The Drapery Falls」は素晴らしいの一言。マイルドな前半と極めて攻撃的な後半の落差は非常に大きいが、前半・後半のどちらも紛れも無くOpethの曲だと感じさせる一貫性をスタジオ盤以上に強く打ち出せているのも見事と言うより他に無い。
それにしてもこのバンド、見目が良い。メンバーそれぞれが知的で穏やかな風貌の男前だと言うのもあるが、ステージングには特段凝ったところも無くただ演奏しているだけなのに、動きの一つ一つが本当に絵になっていてカリスマ性がバリバリに出ていた。演奏の凄まじさ、立ち居振る舞いから漂う威厳や存在感、その双方の面で彼らが超一流のライヴバンドである事が確認出来るDVD。また、カメラを5〜6台くらい使いながらそんなバンドの姿を丁寧に拾い上げる撮影もとても良く、観客の反応、録音、パッケージングやドキュメンタリーの内容、その他諸々の要素も含めて、実に真っ当に金と手間を掛けて作られているのがよく解る充実度の高さで、Opethが好きなら必ず満足できる内容だと思う。リージョンフリーだし値段も1653円と何だかもう不当なまでに安いし、お勧め。