Lamb Of God/Ashes Of The Wake  (ASIN:B0002T22F0)

俺はまず2ndアルバムの「As The Palaces Burn」を聴き、次に1st「New American Gospel」を聴いている。2ndの暴力的ながらしっかりと統制された、ある意味キャッチーなサウンドを心底気に入ってから(と言っても聴いたのは今年の春先になってからだったが)1stのアングラ志向バリバリな暴虐ヘヴィネスを聴いているので、本作の1stの頃への揺り戻しが起きたような制御不能のブルータリティは、聴いていると意外なような、しかしこれはこれで納得出来るような、けれども何か寂しいような、と言うようなちょっと複雑な気分になる。が、徹底して生々しい鈍色の凶悪さを強調した造りには、聴いているだけで圧殺されそうなほどのインパクトがあるのは間違いない。
鉄槌で叩き潰したかのように重苦しく、鈍くかつ鋭い凶悪リフと残虐グルーヴと超絶にヘヴィなリズム隊、そして獣の咆哮そのもののヴォーカルが聴き手を真正面から蹂躙する11曲47分。楽曲に篭められた熱量が尋常でないためか、良い意味で、どの曲も判を押したように似ている。テンポチェンジや急激な曲の転換によるダイナミズムは抑え気味にして、リフを小刻みに展開させながら徹底的にヘヴィネスと暴力性を撒き散らす様は重戦車そのもの。全体的に速いパートもさほど多くなく、ミドルテンポでほぼ統一されていて、とにかく聴いていて感じる重圧感、圧迫感は強烈。キャッチーさ、或いは曲ごとのキャラ立ち、整合感と言う意味では前作の方が良いが、本作はとにかく無軌道に暴れまわる「力」に寒気が来るほどの鋭利な狂気、耳や肌が焦げ付くほどの暗い熱気が篭められていて、それに無条件に屈服させられる。サウンドプロダクションもその変化に合わせてのものか、腹に鉛のボディブローを絶え間なく打たれるような重低音の生々しい殺傷力が強調されており、極端にモノトーンで野蛮な手触りがめちゃめちゃ格好良い。スタイリッシュでさえあった機械臭を抑えているのも上手い、と思う。
それにしても、前作や前々作から比べても明らかにレベルが跳ね上がっているヴォーカルの凶悪さ、獣性が唖然とするほど凄まじい。鋼鉄のオブジェに鉄鎖で繋がれた手負いの獣が鎖を引き千切らんと吠え猛りながら暴れているような……ありきたりな比喩で申し訳ないけれども、本当にそういう形容がぴったり来るようなド迫力加減。ただ凶暴なだけでなく、威厳や風格のようなものまで漂い始めている辺りも頼もしい。
確かに、表情豊かでバラエティに富んだ楽曲が収められていた前作と比べると、楽曲の幅は狭まっているとは思う。決して一本調子ではなく、バンドサウンドやヴォーカルに宿る暴虐性とはまた別の思慮深い冷徹さも感じさせる曲作りには、聴き込むほどに味も滲むような深みもあるものの、何にせよ一聴しての取っ付き易さは大きく減退しているとも思う。が、そういう細かい変化(少なくとも退化ではない)に拘るのがどでも良くなるほど本作に封じ込められた暴力性、獣性、残虐性は圧倒的。キャッチーさを削り、ブルータリティに満ち満ちた造りからは、孤高性や負の求心力やカリズマティックな存在感も見えてきた。