The Music/Welcome To The North  (ASIN:B0002MONAO)

1stEP「The Music EP」にあったひんやりとしてダルなサイケ臭、前作「The Music」の思い切りアッパーで快楽主義的でハウスやテクノを模したギター音による陶酔感はかなり薄まっている感じ。代わりに、#1「Welcome To The North」や#2「Freedom Fighter」、#10「One Way In, No Way Out」辺りを中心として、どっしりと腰を落としたグルーヴとリフで構成した曲が目立つ。また、#6「Fight The Feeling」のようなバラード、#8「Into The Night」や#11「Open Your Mind」のようにしっかりとしたメロディ運びを持つ曲もあり、前作がどの曲も似ていたのに比べると曲のバリエーションが随分増え、またバンドサウンドが作り出すグルーヴもより強靭になっている、と感じられる。
全体的に、前作よりもヴォーカルとメロディを活かした作りになっている、と思う。前作ではメロディはグルーヴの中に組み込まれていてその中で効果を発揮しているような感じだったが、本作ではメロディと単独で抜き出しても聴ける曲が多く、なおかつメロディとリズムが乖離してしまうのを巧みに避ける事にも成功していると感じた。また、ヴォーカルにもハイトーンで叩き付けるように歌うだけでなくメロディを伸び伸びと歌い上げる余裕も感じられるため、前作よりもヴォーカル、メロディ、ギター、リズム隊がより強固に、かつ自然に組み合わさっている印象を受けた。腰を落としたというか重心が低くなったというか、聴いていて腰の奥に来るようなリズムの心地良さが強調されている、と思う。サウンドプロダクション、バンドサウンドともに前作よりも骨太でがっちりした音を志向していて、アメリカ進出を意識したと言うのも納得の頑健な音の鳴り。高音域で鳴り響くアシッドなギターの音が減った事もあり、よりナチュラルで飾り気の無いロック、それもリフ主体のハードロックに近づいて来たと思う(そうは言っても、ヴォーカルのナイーヴで少年の面影を残す歌声には繊細なイメージもまた強いが)。この変化を寂しいと感じる向きも勿論あるだろうけれども、俺は凄く気に入りました。中でも、トライバルなビートの取り入れ方のセンスが素晴らしく良く、後半のスキャットが何ともドラマティックな#3「Bleed From Within」とポップで明るいメロディとシンプルだが心地良い8ビートが耳に残る#7「Guide」が特に好き。また、前作の雰囲気を残す曲も#9「I Need Love」、#5「Cessation」と残っていて、特に#5の方は前作以上に性急なビートが非常にキャッチーで格好良いと思う。
曲の出来も押しなべて良く、前作から2年ほどの間にバンドが鍛え上げられているのが感じるのも好印象。その分、勢いの良さと言うかヤケッパチ気味のハイテンション具合は引っ込んで、落ち着きすら感じさせる居佇まいなのは、まあデビュー2作目としては少々余裕見せ過ぎなのではないかと思わなくもないが、それもまた成長の証と言う事だと思う。気力充実の力作。ロックの救世主、などと言った言説をもはや必要としない単なるロックアルバムであり、だからこそ、長く付き合える一枚になりそうな気がする。