The Polyphonic Spree/Together We Are Heavy  (ASIN:B000219PQW)

二十人超編成の白装束集団(今回のジャケでは、メンバーはカラフルなローブを纏っているが)にしてシンフォニックポップバンドの2nd。演っている音楽から受ける大まかな印象……ほぼ100%ポジティヴでハッピーな完全肯定ポップソングを、ドラム・ベース・ギター・コーラス隊・フルートその他の管楽器・キーボードにテルミンなど等を含む大人数のバンド編成の利点を活かして無闇矢鱈と壮大なスケールで展開する、と言うのは1stとさして変わらない。が、色々と前作との違いもあり、そこに聴いていて面白さを感じる。
曲作りの方法、と言うか曲構成には割と大きな変化が見られる。前作は、延々とサビが流れ続けているような曲が多く、最大光量の光の束が絶え間なく均等に降り注いでいるような感じだったが、本作はAメロBメロサビといったオーソドックスな造りになっていたり、起承転結がはっきりした展開を持つ曲があったり、とより普遍的でカラフルなポップスの体裁を取っている曲が多くなっている。その起伏に富んだ曲の流れが、大音量のコーラス隊や管楽器隊による爆発的なサビの説得力をより一層高めており、このバンド編成の利点・魅力が前作よりも効果的かつ的確に引き出されていると思う。大曲小曲をうまく取り混ぜた曲順から、アルバム一枚として大きな流れを作り出そうとする意識を強く感じるのも良い感じ。
割と輪郭のはっきりした曲が増え、曲単位の良さも明確になったのも前作から変化、と言うか成長した点だと思う。非常にポップで印象的なメロディと比較的コンパクトなアレンジを持ち、彼らの代表曲の一つとなりそうな#2「Section 12(Hold Me Now)」、8〜10分を存分に使って劇的で祝祭的なクライマックスを演出する極めてプログレッシヴロック的な大曲で、ヴォーカルの節回しにピーター・ガブリエルを髣髴とさせるところがたまにあるために、どことなく「反転してポジティヴになったジェネシス」みたいな印象がある#7「Section 17(Suitcase Calling)」や#9「Section 19(When The Fool Becomes A King)」など、二十五人編成とか白装束集団とか、その辺りの言わばハッタリを差っ引いて考えても良い曲が詰まっている。これは本作の強みだと思う。
二十数人が一斉に音を鳴らす迫力・有無を言わせない説得力を要所要所でこれでもかと言うくらい見せ付けつつ、割と何気ないポップスのような手触りもあるので、より気軽に聞けるようになったと思う。それでいて、聴いていると自分の中の悪いものが流れ出ていくような、胡散臭いほどに清らかでハッピーな空気は前作同様で、つい何度も繰り返してしまうような麻薬的魅力があるのは相変わらず。聴いていて本当に気持ち良いです。お勧め。