ありやま君

ファミリーマートで昼飯を買ったときの話。
その日の昼に食べるかしわ握り3個セットと、それからデザート用のゼリー選んでレジに持って行った時、俺が向かったレジに詰めていたのは、髪の毛の色を金に近い茶に染めて、どうにも締まりの無い……と言うか、まあ言ってしまえばぼんやりと間の抜けた顔で、俺より幾つか下に見える男だった。身体の芯に力が入っていないと言うか、見るからにだらけていて、ぱっと見の印象ははっきり言って良くない。名札を見ると、平仮名で「ありやま」とある。ありやま君は、あまり慣れてなさそうで手際の悪さでおにぎりとゼリーをもたもたと袋に入れてくれたが、その時に彼は、
「お箸はお付けしましょうか?」
と聞いてきた。おにぎりにお箸をつけるかどうかまで気を遣う店員の人はいるようでいない。おお、見た目とか動作の鈍さの割に(失礼)ちゃんと気が利くなあ、と思いつつも俺はおにぎりは素手で食べるのが好きなのでそれは断り、代金を渡しておにぎりと弁当が入った袋を受けとった。その一言で、俺の中でのありやま君の印象はかなり良くなった。
数時間後。かしわおにぎりを3つ食べ終わり、さてデザートを食べようかと袋からゼリーとスプーンを取り出して……無い。スプーンが。ありやま君はお箸は付けるかどうか聞いてきたくせに、客に一々聞くまでもなく入れておかねばならないスプーンを入れ忘れていた。
ゼリーは結局容器に直に口を付けて啜るようにして食べざるを得なかった。ありやま君に対する印象は再び悪くなった。ありゃまあ。