Dream Theater/Falling Into Infinity  (ASIN:B000006V5C)

彼らのアルバムの中では人気・存在感ともに薄い方に数えられる1997年発表の4thアルバム。だが、個人的には本作はとても気に入っている。
このバンドが今までに発表した7枚のフルアルバムのうち、最も洗練された一枚、と言って良いと思う。彼らのアルバムはどれを取っても基本的に過不足は少なく、いずれも洗練されていると言えなくもないが(近作「Train Of Thought」は別。あれは逆に未洗練や冗長を武器にするところがある)、このアルバムは単に過不足が少ないという状態から更に一歩踏み込んで、本作以外のアルバムなら残しているであろう部分も大胆に削り取っている、と言うような印象がある。また、非常にキャッチーなサビメロの#2「You Not Me」やレゲエっぽいリズムを持つ#8「Take Away My Pain」、アメリカンロック的な溌剌さのある#9「Just Let Me Breathe」など、本作にしか見られないタイプの楽曲や、本作のみの参加であるデレク・シェリニアンの独特なキーボード捌きもあるため、本作は異色作のような位置付けがなされる事が多いのだと思うが、いかにもDream Theater的な#5「Burning My Soul」〜#7「Line In The Sand」の三部作や#11「Trial Of Tears」と並んで上記のような必ずしもDream Theater的でない楽曲が収録されている本作は、一枚のアルバムとして非常にバランスが良く、聴きやすい。
聴きやすくて洗練されている、と言うのは、要するにポップであるという事。本作は、超人的なプレイヤビリティを持つ手練の集団である彼らが、外部プロデューサーのケヴィン・シャーリーの力を借りて彼らなりのポップアルバムを作ろうとした結果、と思っているし、その試みは十分成功しているように思う。近作「Trial Of Tears」は足し算は知っていても引き算は知らない、と言うようなゴリ押し上等の極めてエクストリームなヘヴィメタルアルバムだったが、それ故に「この路線では次辺り行き詰るんではないだろうか」と言うような不安も聴いていて感じる。だから、彼らには次作でこの「Falling Into Infinity」のようにポップでコンパクトなアルバムを(場合によっては、再び外部プロデューサーを立てて)作って欲しい。今のこのバンドが本気で商業的成功を目指したポップなアルバムを再び作り、そしてその試みが結実した時、また新しい音楽が一つ作り出されるはずだと思っている。


書き終わってから、言いたい事がcotaさん6月14日の日記と全く同じ事に気付いたが、まあいいか。