Disarmonia Mundi/Fragments Of D-Generation  (ASIN:B0001Z2YTO)

最初、何気なく視聴した時は「ヴォーカル、めちゃめちゃビヨーン意識してるなあ」と思っていたが、帯をよく見たらビヨーン本人がスクリームヴォーカル担当と書いてあったので驚いた。
Soilworkみたいな音楽がやりたいけれどもヴォーカリストがいないから当のSoilworkのヴォーカリストを起用する、と言うウルトラCをかましている事から窺えるように、北欧メロデスをベースにしてその上に近未来的かつミステリアスなキーボードとキャッチーなコーラスを乗せる、と言う本作の方向性はモロに最近のSoilworkIn Flamesの影響を受けたもの。たが、鋼とゴムの特性を併せ持つドラムを武器にガツガツした2ビートの突進と思い切りグルーヴィなミドルパートを絶妙なタイミングでスイッチしたり、音像全体の上にウワモノっぽく音を乗せる手法とバンドサウンドの隙間に音を差し込んで楽器隊にデジタルなニュアンスを付け加える手法の使い分けがこれまた絶妙なキーボード、重層的で豊かなコーラスワークなど、とにかく全般に渡ってセンスが恐ろしく鋭い。音像の隅々にまでコントロールが行き渡った音塊が時に鋭く攻撃的に、時に一斉に視界一杯に広がるように迫って来るのが非常に格好良いと思う。殊にフィルターを通して処理したヴォーカルの使い方が独特(と言うか、このテの音楽でそう言う事をしているのを他に聴いた事がない)で、それが最も効果的に働いている#9「Shattered Lives And Broken Dream」はすごく刺激的で新しい。Linkin Parkを意識したようなメロディ遣い・リズム感覚と中間のギターソロの対比がドラマティックな#3「Red Clouds」、ディスコビートと叫んでいるのにめちゃめちゃキャッチーなサビのノリの良さが印象的な#6「Oceangrave」等、要素要素を拾い出してみればどれも既存のものだが、その組み立て方は実に秀逸。ほぼ全ての曲に配されたギターソロ、#1「Common State Of Inner Violence」や#5「Swallow The Flames」の攻撃性と哀感がないまぜになったメロデス的な突撃リフなど、土台となるヘヴィメタルの部分が強固で、その上でスタイリッシュで新鮮な要素が散りばめられているのが痛快極まりない。また、メロディアスな怒声の持ち主としか表現のしようがない当代屈指のヘヴィメタルシンガー、ビヨーンの刺々しさと艶っぽさが同居するパフォーマンスは当然の如く最高で、正しくこういう音楽のためにあるような彼の声が、単なるフォロワーの枠に収まらない本物感とワンランク上の説得力を本作に持たせている。
上で名前を挙げたバンド達の影響があまりにも明白であるのが弱点といえば弱点か。だが、あちこちから持ってきた要素を料理する手腕が並外れて巧みで、曲自体の出来も非常に優れているために四の五の言わせない強靭さがこのアルバムには備わっている、と思う。問答無用の格好良さ。ヘヴィメタルに限らずヘヴィで攻撃的な音楽が好きなら文句なくお勧めできる一枚。