Throwcurve/レディオフレンドリースロウカーヴ  (ASIN:B00008Z73F)

7曲入りミニアルバム。摩由さん(id:LIZARD)がよくこのバンドの話題を書かれているのでしばらく前から気になっていたんだけれども、数日前に中古CD屋で運良く見つけたので買って来た。
線が細く甘い声質だが時に喉を振り絞って叫んだりもするヴォーカル、妙なクセがあってストレートには展開して行かないメロディ、メロディ以上にねじくれたフレーズを乱発するギターとベース、リズムパターンがころころ変わる忙しないドラムが繰り出す楽曲は、基本的にギターロックの範疇に括られるもの。だが、メロディの本筋とは直接関係無いようなフレーズやリズムチェンジが曲のあちこちに散りばめられていて(かと言って装飾過多と言う訳でもない)、その「脇道に逸れる」ようなパートがすごく印象的。その一方で曲の主体となるメロディとヴォーカルはすごくポップ、と言う捻れたバランス感覚がとても面白く、耳を惹かれる。各楽器とヴォーカルが全員同じ方向を向いて一気呵成に曲を構築する、と言う感じではなく、結構各人の出している音がバラけているせいか、聴くたびに耳に一番響いて来るフレーズが違う(だから、ポップではあるがレディオフレンドリーではない気がする。このタイトルの付け方は上手いと思った)のでつい何度もリピートしたくなる。確かに、一度ハマると癖になる音だと思う。
たが、様々なモチーフを一曲の中に詰め込み過ぎていて楽曲の輪郭がぼやけている、或いは少々冗長であるように感じられるところもあり、独特な曲作りのセンスが曲自体の良さに必ずしも直結していない気がする。面白いフレーズは多いしメロディも良いんだけれども、聴いていてやや纏まりに欠けるように感じられる、と言うか。また、どちらかと言うと繊細さを武器にするようなバンドだと言う事を差し引いても、バンドサウンドはちょっと線が細過ぎると思う。音圧に欠ける演奏と隙間があり過ぎてスカスカなサウンドプロダクションは、どうもスムーズに曲に入り込んでゆくのを阻害しているように感じた(まあ、これは俺が普段聴いているものがゴリゴリしたのばっかりだってせいもあるとは思うが)。
豊富なアイデアを持ってはいるものの、やりたい事に演奏力やコンパクトに曲を纏めるためのスキルが未だ追い付いていない、と言うのが本作を聴いた限りでの印象。その辺の才気走ったアンバランスさ・不完全さ・詰めの甘さこそが魅力と感じる向きもきっとあるんだろうけども、この独特のセンスを活かし切った強靭なポップソングが聴きたい、と俺は思った。フルアルバムが今月の23日に出るようなので、それも聴いてみたい。