セカイ系の昼食

今日は一日家に居たんだけれども、昼飯が何も無かったので14時半過ぎに外に食いに行った。昼は洋食にしよう、と思いつつ自転車を漕ぎ出す。暑い。だらだらと汗を流しつつも何となくうきうきした気持ちで(洋食好きなので)、日頃あまり行かないけれども値段はそこそこで美味しい下大利駅前の洋食屋まで15分くらい掛けて行った。ここはたまに気が向いて入ろうとする度に何故か店休日がなっている事がとても多いんだけれども、今日は店がちゃんと開いている。良かった。ドアを開けて、店内に入ろうとする……と、店のおばちゃんが勘定を済ませた中年女性二人組をちょうど送り出そうとしているところだった。イヤな予感がする。そして、その予感は正しかった事がすぐに解った。
「すみません、3時から5時まで準備中になるんですよ」
……。
もう5回くらいこの店で食べようとして食べられない事が続いている気がする。このタイミングの悪さは一体何なのか。悲しい気持ちになった。
仕方がないので、次善策として駅から自転車で15分くらい離れているサティの中にあるオムライス屋に行く事にした。駅前の静かでこぢんまりとした洋食屋からデパートの1Fにあるチェーン店のオムライス屋と言うのは多少ランクが落ちているような気もするが、まあそれでも洋食には違いないと思う事にして自転車に乗る。暑い。だらだらと汗を流しつつ自転車をせっせと漕ぎ、サティに着いて正面玄関から入ろうとしたら、自動ドアの脇に控えていた店員から呼び止められた。
「お客様、会員証をお見せください」
「え? いや、持ってないですけど」
「申し訳ございません、今日は会員様特別ご招待の日ですので、会員でない方の入店はお断りさせて頂いているんですが」
「はあ……」
「あちらで(と、彼は入り口の傍に設えられた机を指差した)簡単な手続きで入会出来ますが、入会なされますか?」
するか。
サティの中で売っている品物に用は無いのに。ただ、おむらいす亭でデミグラスソースのオムライスが食べたかっただけなのに。
俺はなんだか打ちのめされたような気持ちになって、乗って今来たばかりの道を悄然と引き返して行った。うきうきした気持ちと「今日の昼は洋食」と言う当初の目的は、2連続で受けた理不尽な仕打ちによってとっくにしぼんでいた。世の中の全てが自分の昼飯にとって良くない方向に働いているのではないか、と言う気持ちにさえなった。
結局、家のすぐ近所にあるラーメン屋まで戻って、しょんぼりした気持ちでチャーハンセットをもそもそと食った。1時間近く自転車を無駄に漕いだ徒労感と、謂れの無い敗北感が残った。