城直樹/Perfect World (ASINなし)

金曜の夜の話だが、さて帰ろうかと天神駅に向かって歩いていたら、じゃかじゃかしたギターの音が向かっている先から聞こえてくる。もうしばらく歩くと、駅北口の入り口近くでギターを弾いている人の姿がちらりと目に入った。よくこの辺りにいる弾き語りかと思い、(ギター抱えている人の歌に何か感じるところがあったためしが無いので)素通りしようと思っていたが、どうも普通の弾き語りと違うらしい。周囲には結構立ち止まって聴いている人がいるし、そもそも歌が聞こえてこない。ちょっと興味を惹かれたので、周りで聴いている人の中に自分も混ざって聴いてみた。
人の輪の中心でギターを弾いている人の演奏スタイルは、ギターを全く触った事が無い俺にも明らかに普通のそれとは違う事がわかるくらい独特だった。説明するための語彙を持ってないんで何とも言葉にし辛いが、とにかく一人で弾いていると思えないくらい音が沢山鳴っている(速いんではなくて厚い。ギターってこんなに同時に沢山の音を鳴らせることが出来たのか、と思った)。手元を見るとなんか曲芸じみた動きをしていて、どうやって弾いているのか全然解らない。さらに、ギターを弾きながら同時にボディを叩いてリズムを取っている。いや、リズムを軽く取っているという感じではなくて、完全にギターのボディを打楽器のように扱っていた。全身を揺らして叩きながら弾き、弾きながら叩く。鳴っている音も弾いている姿もめちゃめちゃ格好いい。人が集まるはずだ、と思った。自動車椅子に乗った爺さんが近付いて行って手元をじっと見ていたのが妙に目立っていた。
で、このアルバム「Perfect World」はそのギターを弾いていた本人から手売りして貰ったもの(ひとしきり弾き終えた後にえらく渋い声で「CD出してます」って言われたら、すごく欲しくなった)。全曲オーヴァーダブ無し、ギター一本のインスト作品。目の前で聴いためちゃめちゃパーカッシヴな演奏と比べると、本作に収録されている演奏は幾分ゆったりしているような印象を受ける。何となくノスタルジックで優しげなメロディや音色は、速い曲であっても聴いていてどこか落ち着く。夜、一人で部屋にいる時に聴いていたらすごくスムーズに音が耳に入って来た。9曲で30分強と短いのもあって、繰り返して聴きたくなるような感じ。
ちなみに一曲分のライヴ映像付き。実際に弾いているところを観ると、やっぱりアルバムに収められた演奏にはあまり出ていない激しさとか鋭さとかすごく楽しそうに演奏しているところとかが見えて、やっぱりこれはCDとライヴ演奏と両方聴きたい、と思わされる。本人から今度ライヴをやるって教えて貰ったんだけど、公式サイトでスケジュール見たらライヴは今日って書いてあった。今日はシロップに行くんだよな……残念。