Syrup16g@6/6、福岡イムズホール

会場に入ってちょうどホールの中央辺りに陣取ると、やけに前方の視界が良い。つまり、平均身長が低い=男が少ない。下手したら3:7くらいなんじゃないかって男女比だった。客層はほとんどが俺と同年代であまり年齢にはばらつきが無く、なんか全員はてなダイアリーやってそうな雰囲気と言うか、妙な統一感があったような気がする(川瀬さんとかへもさんとかがたぶんこの中にいる、と言う先入観のせいもあると思うが)。俺の隣にいた女性二人連れの片方が、立ち位置を抜ける時と戻ってくる時に「すみません、失礼します」と礼儀正しかったのがすごく印象良かった。いや、それはライヴとは関係無いか。
サポートギタリスト含めての四人編成になっていたのは最初ちょっと驚いたが、四人でやっているメリットは確かに感じられた。五十嵐氏がアコギに持ち替えて座りながら歌い、サポートの人がエレキギターを担当すると言う曲が本編では半数近くあり、歌いながら自分一人でギターを弾くと言う負担が軽減されて歌に集中出来ているように感じたし、そのせいもあってか歌もわりと安定していた。サポートギタリストの存在は結構大きかったと思う。また、数曲ではソロもこの人が弾いていて、中でも「夢」のソロは短いながらも聴いていて息が詰まるくらい良かった。
バンドサウンド全体についてもすごく安定感と重量感のある演奏で、ギターノイズの底でやたらとメロディアスなフレーズを弾いているベース、CD音源より遥かにラウドなドラムの存在感は抜群。ジャストな鋭さよりもズシンと腹に響く重さを感じるドラムの音は、静かな曲調で始まって徐々に盛り上がって行く曲ととても良く合っていて、殊に「I・N・M」や「希望」辺りは本当に感動的だったと思う。
ただ、五十嵐氏が立ったり座ったりを繰り返しながらライヴが進んだせいで流れが途切れがちだったからか、歌を聴かせる事に意識が行き過ぎていたせいか、それとも4人でやっていて安定感が出過ぎていたのか、しっかりとコントロールの効いたライヴ運び・演奏・歌でもって彼らの曲が本当に良い曲揃いな事を再確認させてくれた反面で、ライヴ本編は攻撃的な曲であってもどこか抑え気味で演っているような印象があって、どうも聴いていて乗り切れないところがあったように思う。まあ、「Mouth To Mouse」がじっくり聴かせるアルバムだったし、今回はまったりと歌を聴かせるって事だろうか、と攻撃性にやや欠けるライヴだったのを少し残念に思いつつ、「メリモ」で本編は終了。
たが、アンコールでは、一曲目の「My Love's Sold」はアコギで座りながら歌う曲だったにも拘らず唐突にリミッターが外れたかのような破壊的演奏、それに続く「リアル」は強烈なギターノイズの壁、ドラムンベースの再現はほぼ放棄して突っ走るリズム、ギターを置いてハンドマイクで観客を煽る五十嵐氏、と本編と全くテンションが違っていて驚かされた。ギターの替わりに手に嵌める人形持って歌ったり(腹話術の真似をしていた。オーケンとボースカかと思った)、ドラムの中畑氏が「Coup d'Etat」の歌詞を一部差し替えて絶叫したり、人力ブレイクビーツみたいなめちゃめちゃ格好良いドラムソロ叩きながら何故か「移民の歌」のシャウトをかましたり、「落堕」ではサポートギタリストが妙にメタルっぽいポーズ決めながらソロ弾いたり、とアンコールの方が見た目に派手な演出と言うかアクションが多かった。シングル曲でもある「リアル」を本編ではなくアンコールでやった事も含めて、この豹変っぷりは明らかに意図的なものだと思う。やられました。それまで割と黙って聴いていた観客(勿論俺含む)も、アンコール以降は大盛り上がりだったし。今日がツアー最終日だし、このまま出し尽くす勢いでアップテンポの曲を連発しているのかと思いきや、オーラスに再びゆったりした「Your Eye's Closed」を持って来て、しかもしっかり歌えているのも意外で良かった。
そんな訳で、本編でなんとなく感じていた不満はアンコールで完全に解消された。正味2時間弱、終わってみればすごく良いライヴでした。一昨年の暮れに観たDelayedツアーの時より、歌・演奏ともにずっと良かった。今回は、アコギ/エレキの切り替えと本編/アンコールの落差でもって歌を聴かせるパートと暴走するパートをかなりはっきり分けていたが、今後この二つを同時に見せる事が出来るようになれば、凄いライヴバンドになりそうな気がする。


ちょっと長過ぎるな。感じた事をそのまま書いてたらこの分量になってしまった。申し訳ない。
追記。「Your Eye's Closed」はオーラスじゃなくてアンコール2のラストだったみたいです。俺の覚え違い。失礼しました。セットリストはへもさんのライヴレポで確認させて頂いたんですが、へもさんのところにもライヴの空気が伝わる素敵なレポが書かれているので、うちを読まれた方は是非そちらもどうぞ。