LAMB OF GOD/As The Palaces Burn (ASIN:B0001FAFCM)

このバンドのアルバムは初体験。モダンヘヴィネスの重圧感と北欧メロデスのメロディ遣い、デスラッシュの突進力と痛快に刻みまくる鋭いリフ、それから場面によってはブラックメタルの邪悪さや厳粛さをも混ぜ合わせた激烈音楽で、帯にはニュースクール・ハードコアと銘打たれていたけどもハードコアっぽさはあまり無い気がする。音にどこか醒めて乾いた風合いはあるものの全体的な手触りは正しくヘヴィメタル。ただ、ニュースクールって呼ばれている他のバンドがかなりメロデスの要素を強く打ち出しているのに比して、このバンドは直情的な泣きメロは抑え目、代わりに得体の知れない残虐リフとMESHUGGAHやらFEAR FACTORYやらSTRAPPING YOUNG LAD辺りに通ずるズガガガガッ! て感じのインダストリアル無慈悲機械ビート攻撃・神経症的な浮遊感のあるギターフレーズが多く、その配合具合がえらく格好良くて自分好み。割と低めの声で咆哮する凶暴なヴォーカルと言い一丸となって突進してくるバンドサウンドの強度と言い相当にブルータルだが、音に宿るメタリックな冷たさ・鋭さはスタイリッシュとさえ表現出来そうな程洗練されて冴え渡っている。
これだけ凶悪な音を撒き散らすアルバムでありながら、妙にキャッチーなのがポイントかと思う。分離が良くメジャー感のあるサウンドプロダクション、この手のものとしてはかなりバラエティに富んでいて解りやすい魅力のある楽曲からは、唯我独尊に我が道を突き進むアングラ臭があまり感じられず、むしろこの音がより多くの人に届くように、と言う配慮がなされている気がする。音にヌルいところなんて無いし、かなり複雑でトリッキーな部分もあるんだけれども、ラウドな音楽が好きなら大抵の人がスムーズに入っていけるんじゃないか、と思える間口の広さ。まあ、その分だけ制御不能の力が暴れ回る手の付けられなさや化け物クラスのバンドが持つコミュニケーション不能な不気味さと言った負の求心力にやや欠ける(言い方を変えると、人間味が残っている)ように思うんだけども、何となくこのアルバムはエクストリームな殺傷力と多くの人に受け入れられる解りやすさの両立を目指しているような気がするので、これはこれで良いかと思う。極端に攻撃的だが何故かキャッチー、と言うバランスの取り方は、ひょっとしたらプロデューサーのデヴィン・タウンゼンドからの影響があるのかも知れない。
鬼気迫るテンションの演奏で繰り出される全10曲の出来は総じて良いが、特に#4「11th hour」から#7「A Devil In God's Countory」までの中盤の流れは切なさすら感じさせるダークなメロディと強烈な掘削機リズムの相性が抜群に良くて好き。どの曲も一本調子ではなく、緩急を巧みに使いこなす器用さやテンポチェンジの際に見せるリズム隊の瞬発力、或いはセンス良く差し込まれるちょっとした装飾的なフレーズによって、少ない動作で劇的な展開を作るのが上手い、と思う。
ストイックに突っ走って破壊力とスピード感を追求する姿勢とメタル特有のスケールの大きい叙情性とが見事に共存した、これまた素晴らしいヘヴィメタルアルバムだと思う。ブルータルな音楽としてはかなり聴きやすい部類に入る仕上がりなのも好印象だし、すごく気に入りました。