Children of Bodom/Are You Dead Yet?  (ASIN:B000AA7ECW)

非常にいいところを突いている。狙いどころは本当に絶妙だと思う。が、少々物足りなく、食い足りなく感じられるのも、また確かだと思う。3年弱ぶり、5枚目のアルバム。
去年発表されたEP「Trashed,Lost & Strung Out」を聴いた時に感じた変化は、アルバム全体に反映されている。前作やそれ以前のアルバムよりもヘヴィに、そして小回りの効いたコンパクトな構成になり、スピード感と同時にグルーヴ感も重視してアメリカのメタルコアを意識した作風を打ち出して来た。ただ、流石と言うか何と言うか、メタルコアっぽいところを取り入れつつも決してそれに飲み込まれる事なく、あくまでも一つの要素としてきっちり消化している辺り、したたかさが感じ取れるし、頼もしいとも思う。彼らの看板であるキーボードとギターの高速バトルは前作よりも更に減ってはいるもののなくなった訳ではないし、リフやメロディ遣いの随所にはいかにもこのバンドらしい哀感と、いくら洗練させようと思っても洗練し切れないクサ味がしっかり残っている。その一方で、ザラっとした手触りのある鋭いギターの刻みやリズム隊の高速ビートとミドルテンポの使い分けには、いま現在のエクストリームなヘヴィミュージックとしての説得力が込められており、結果として、今のアメリカの時流を睨みつつも自らの立ち位置を見失う事のない姿を提示する事に成功していると感じた。また、弱いとか下品だとか言われるアレキシ・ライホのヴォーカルの声質を逆に活かすような、ダーティなロックンロール風味が色濃くなっているのも良い。ザラザラと苛立たしく刺々しい、ラフで下品なロック(ただし、良くも悪くもやっぱり洗練に向かわずに野暮ったいところがあったりもするが)と言う路線はよくハマっていると思う。ガチガチに身を筋肉で固めたヤクザと言うより痩せ犬が牙を剥いて吠え掛かっているような感じで、それもまたなんとも言えず味がある。
どういう路線を目指すのか、どうやって独自性を打ち出すのか、については実に明確で納得出来る答えを出してくれている本作だが、その一方でどうも曲作りに関しては詰めが甘いように思える。画竜点睛を欠くと言うか、楽曲を扇情力高く仕上げるにはここしかない、と言う曲作りのツボを微妙に押し損ねているような感じ。音像が醸し出している雰囲気や、一つ一つのプレイ、リフ、ソロ、声質に合わせて設えられた楽曲の中でちゃんと良さを発揮しているヴォーカル、メロディ、それら個々の要素は格好良いんだけれども、あとほんの少しのところで高揚感が沸点に達してくれないと言うのが何とも残念であり、またもどかしくもある。曲作りやメロディの組み立てに必要な嗅覚は元からとても優れているバンドだと思うが、本作に関して言えば、楽曲は良く練られているものの、最後の仕上げに必要なハナが効いていない感じ。そのためか、どうも似たような曲が多いように感じられてしまうのも勿体無い。
そんなわけで、あと一歩の詰め不足で非常に惜しい一枚、と言った印象を受けた。ただし、繰り返しになるがアルバム全体としての方向性や雰囲気は良く、文句なく格好良いと思える瞬間それ自体は少なくない。不完全燃焼のきらいもあるものの彼ららしい魅力はしっかり封入された一枚であり、大見得を切ってみせたアルバムタイトルにあるような前のめりの姿勢の格好良さ、潔さは確かに刻み付けられていると思う。
なお、ボーナストラックとしてブリトニー・スピアーズとPoisonのカヴァーが収められている。両方ともまあジョーク交じりの正しくボーナスと言った按配だが、シリアスに傾きすぎずこういう頭の悪い事を平気でやってくれるのは個人的には非常に好印象。