犬(暗喩でない)の散歩

夕方。
家から出て、ちょっと車で買い物でもと車庫の扉を開いていたら、何やら外の道路から俺の方にとたとたと歩み寄ってくる影が一つ。何かと思って見てみれば、それはタヌキ顔をした隣の家の飼い犬だった。夜中に、何とも文字では表現できない奇妙なしゃっくりだか咳き込みだかを繰り返す変な犬である。改めてこうやって間近で見るのは初めてだが、物腰や毛のツヤ、それから瞳の感じからしてみると結構な老犬のように思える。そいつがこっちにものすごーく嬉しそうに寄ってくるもんだから、首輪にリードがくっ付いていなくてもこれは逃げてきたんだなと言うのがすぐに分かった。
でもなあ。逃げてきて嬉しいのは分かるけど隣の家ですぐに引っかかるようでは駄目だな。そう思いながら、うちの庭に勝手に入ってつつじの木に身体を擦りつけたそうにしていた犬のリードを引っ張り、ちゃっちゃと隣の家に連れて行く。チャイムを鳴らして、ばたばたと奥から出てきたおばちゃんに「逃げ出してましたよ」と告げてリードを渡した。「随分散歩したいみたいで嬉しそうでしたよ」と言うと、おばちゃんは冗談半分でリードを差し出し「行って来る?」と言った。え、いいんですか? うずうず。
そんなわけで、今日は久し振りに福岡で犬の散歩をしたのだった。天気もおかしな事になってないし夕暮れ時で適度に涼しいのでものすごく気持ちよかった。犬が草や地面が剥き出しになっているところに踏み入らないようにリードを引っ張りながらすたすたと歩くのは楽しいなあ。犬のひょこひょこ歩く姿も何だか可愛いので見ていて自然に頬が緩んでしまう。
結局2キロくらい歩いた。良い時間でした。やっぱり人間には犬が必須だな。