坂本真綾/ループ  (ASIN:B0007WZXZI)

2曲入りマキシシングル。今までの全ての曲を菅野よう子が作曲していたかどうかはちょっと調べていないが、少なくともシングルとしては初の菅野よう子以外の作曲家による楽曲のはず。
表題曲は、冒頭のギターの使い方やシンセによるトラッド風のフレーズこそ今までのイメージを踏襲するものだが、メロディは随分と素直で、言ってみればJ-Pop的な一曲。ベースとギター以外は全て打ち込みで、今までなら弦楽器が鳴っていたところでシンセが鳴っていると言うのは新鮮なようでもあり、その一方で結構な違和感を覚えるところでもある。音像やアレンジに漂っていた独特のクセ……北欧の風変わりなミュージシャンの曲を聴いたときのような、自分が慣れ親しんだものとどこか違う、けれどもとても心地良い手触りはやや薄れていると思う。なので、聴いていて今ひとつ釈然としないものを感じはするが、本人の歌声は相変わらず伸びやかでとても魅力的だし、これ自体は良く出来たガールポップだと思う。
一転して、カップリングの#2「ハイタッチ」は能天気なリフ、ズンタタしたリズム、陽気なメロディ、ハンドクラップにコーラス、とびっくりするくらいビーチボーイズ風のサーフロック。何と言うか、本当に何の捻りも無くてストレート極まりない曲調だが、屈託のない歌い方も良くハマっていて実は表題曲よりもこちらを気に入って何度もリピートしてしまった。
これからも菅野よう子以外の作曲家/編曲家を起用するのかはまだ解らないが、少なくともこの2曲においては、今まで彼女を特別な存在にしていた濃密な空気は希薄だと感じた。が、その一方でよりキャッチーになり間口が広がっているのも確か。これからどう展開していくのだろうか、と言うのはとても気になる。