Boom Boom Satellites@福岡Drum Logos、4/14

忘我。ってのはああいう状態の事を言うんだろうか、と言うくらい脳味噌が吹っ飛んでひたすら踊っていた……ような記憶があるが部分的にしか覚えていない。新譜「Full of Elevating Pleasure」(感想はこちら)のアッパーな内容をそのまま引継ぎ、なおかつそれ以上の姿を見せ付けたライヴだった。
この手のテクノ寄りのバンドのライヴに行くのは全くの初めて。思い切り場から浮いてしまうのではないかと少し不安になりながらロゴスに入ったんだけれども、入ってしまえばそこにいるのは概ね普通、と言うかロックバンドのライヴによく来ているような感じの人たちだった。平均年齢はちょっと高めで20代半ば〜後半くらいだったような気がする。
結構な量のスモークが焚かれて視界をぼやけさせつつダブ寄りのBGMが流れる、と言う中でぼんやり突っ立って待っているうちにメンバー二人+サポートドラマーが出てきて「Rise And Fall」を演奏し始めた……とにかく音がデカくていなたい。そして音数が多く、ドラムの音は無茶苦茶にヘヴィで、恐ろしく速い。初っ端からこちらを力尽くでねじ伏せようとする姿勢は、大人気ないまでにシリアスで容赦が無く、速くて重くてデカくて冗談が通じないと四拍子揃った暴力的な音塊に圧倒される。「Rise And Fall」でいきなりテンションを上げまくった後に続けて音源以上にマッチョなビートと、音源よりも生々しくささくれ立ったヴォーカル(エフェクトがかかっていない生声だからだろう。しかし川島氏の地声はエフェクトかけなくてもめちゃめちゃ格好良かった)が際限なくこちらを煽り続ける「Ride On」でもうアタマのネジが二つ三つ緩んだ。で、後はひたすら身体を激しく揺らすのみ。アルバムでは硬軟の両面を使い分けながら流れを作り出していたが、ライヴにおいてはひたすら攻めの一手。「Let It All Crount Down」と「Rout For Exile」くらいしか引きの曲は無く、後はただただゴリ押し。強烈極まりないビートを前後左右変幻自在に打ち鳴らして、自分含めた観客を操り人形のようにしてしまっていた。
曲に合わせて身体を揺さぶり、視覚を狂わせるライティングをモロに浴びながらぼんやりと考えていたのは、思っていたよりもずっとロックバンド然としている、と言う事。アルバムにおいては全ての音を完全に統制し掌握しなければ気が済まないと言った雰囲気を醸し出している彼らだけれども、ライヴだと音も感情も暴走するままに任せている、と言う感じ。また、シーケンサーサンプラーが出している音が極限まで歪ませたギターと同じくらい凶暴にこちらの耳を突き刺す音になっていて、クールも何もあったものではない攻撃性が剥き出しになっていたためにそう考えたのだと思う。ただ、自分達自身が出している音や衝動に呑まれている印象は無く、やはりどこかで一歩引いた冷静さもまたあったようには感じられた。
セットリストはアタマが七割がた飛んでいたために良く覚えていないが、新譜の曲は大抵やっていた(ような気がする)。細部がライヴ仕様に作り変えられていて、細かいビートとドラムの生音の絡み合いから轟音ギターの爆発へ、とテンションが下がる暇を一瞬も与えずに、ずっと上がりっぱなしになるような仕掛けがそこかしこにあって、特にリズムが切り替わって新たな展開が表れる瞬間の快感は尋常でなかった(ような気がする)。旧譜からは、覚えている限りでは「Sloughin' Blue」「Dress Like an Angel」「Fogbound」そして聴きたかった「Your Reallity is Fantasy, But Your Fantasy is Killing Me」「Light My Fire」辺りが演奏された(ような気がする)が、いずれの曲も大幅にアレンジが変えられていてちょっと聴いただけではどの曲か解らないほどだった。ただ、どの曲もただひたすらに踊らせるための曲として手が加えられていたのは同様だったと思う。
多分、やっていたのは正味2時間弱。その間、本当にずっと身体を揺らしたり頭を振ったりしていた気がするので今は首の筋が少し痛む、聴いている時は後先の事を考える余裕もなかった。それくらい、圧倒的なライヴだった。めちゃめちゃ格好良かった。