何年早いか解らない話

ブルーノートに連れて行って貰いました。トゥーツ・シールマンスと言うジャズハーモニカの人で……と言っても、名前は初めて聴くんだけれども、とても有名な人らしい。それにしても、御年82歳で1969年にはもう40代後半だった、と言うのは想像も出来ない話だと思った。それでいて、すごくチャーミングと言うかやんちゃな感じの人だった。
一応マトモに見える格好をして行ったんだけれども、まあやっぱりと言うか何と言うか、俺は猛烈に場にそぐわない感じだった。だって、20代の人はほとんど俺だけみたいな感じだったし、冗談でも何でもなく紳士淑女の社交場みたいな感じだったし。大体、俺はどんなライヴ会場に行ってもなんだか場違いなところにいるような気がするんだけれども、今日は段違いだった。背中がむずむずするような、そういう感じ。薄暗い証明とか落ち着いた色合いのカーペットやテーブル、周りのざわめき、そう言った諸々のものが自分が普段居る場所にあるものからえらく遠くて戸惑った。
演奏の方は、勿論悪いはずもないんだろうし、とても暖かい感じで聴いていて楽しかったんだけれども、ジャズの楽しみどころと言うようなものは全然頭に入っていないままだった。ジャズを聴くのも、こういった雰囲気を楽しむのも、まだ自分には早いんだなと改めて思った次第。値段的にも安くない……と言うかはっきりと高いしな。そういうところも含めて、まだまだ。終わった後に一風堂でラーメン食いながら、こっちの方が落ち着くなあやっぱりなどと思ってしまった。それでも、行って良かったなあとは心底思ったんだけれども。十年くらい経ってから、あの時行っておいて良かったとか思うんだろう、きっと。
これで、連れて行って貰ったのが格好良いおねいさんとかだったら文句なしの良い話なんだけれども、生憎そんな訳があるはずもなく、実際のところは叔父に連れて行って貰ったのだった。そういうオチ。