ポチャカイテ・マルコ/Laya  (ASIN:なし)

#1「Laya」の冒頭、タブラと民俗音楽風のスキャット(?)の組み合わせからして怪しいが、全編そんな調子で胡散臭い、と言うのが一聴しての印象。B、Dr、Vln、Keyと言う編成のインストゥルメンタルバンドで、本作は2ndアルバムになる(1stは未聴)。ところどころにギターらしき音も聴こえるが、クレジットに書かれていないのでヴァイオリンを歪ませたものだろうか。
変拍子や不可解なリズムの捩れ、妙な訛りを取り入れた脱臼必至の変則リズム、ヘヴィで邪悪なベースリフ、不協和音で焦燥感を煽り立てるキーボード、リード楽器として機能するヴァイオリンの美しくも不穏で暴力的な響き。曲想の陰に日向に現れる様々な民俗音楽のエッセンス。こう言った類の音楽を形容する言葉をあまり知らないのでどのように言えば良いのか困る、ひたすら怪しい音楽。King CrimsonやMagmaやUniverl Zeroのダークな部分にトラッドの要素を加えたものを煮崩れるまで煮詰めて仕上げた感じ……と言う表現でも今一つ伝えきれていない気がする。何にせよ非常に胡散臭いところと真っ当な格好良さが正面衝突してオリジナリティが生まれている、と言った感じ。大仰で邪悪な美意識が炸裂するところもあればまるで不条理ギャグのようなユーモア感覚や妙に牧歌的なところも見え、楽曲のカラーは多彩。
基本的にヴァイオリンが常にリードを取り明確なメロディがあるし、また、収められた楽曲も起承転結がはっきりしているので聴きやすい。逃げを打つような即興演奏も無く、しっかりと楽曲が構築されていて常にフックのあるメロディがヴァイオリンの華のある音色で奏でられている、と言う意味ではキャッチーでさえあると思う。リズムやフレーズのギミックがそのまま楽曲のキモとして機能している感じで、妙な言い方だが、適度に意味不明なのが刺激的。プログレッシヴロックの様式美に従っているためある程度の予定調和はあるものの、焼き直しのような印象がほとんど感じられないのは、クリアでかつライヴ感のある音造りと重量感があってゴリゴリしたリズム隊が産み出すグルーヴに依るところが大きいと感じた。プログレ懐古趣味のみに陥らない現代性のようなものも変拍子なのに引き込まれるグルーヴに感じられるし、執拗に不規則なリズムの反復を繰り返しながら聴き手の産毛を逆立てるようにじりじりとテンションを上げてゆく様は無条件に格好良い。
#1「Laya」はインド音楽風、#4「ハレルヤ」は何となく中近東っぽく、#5「五十肩」は東欧風(と聴こえるが知識不足なのであまりはっきりとは解らない)と民俗音楽の色が濃い曲、#2「絞首刑」や#3「異教徒:切支丹〜百姓一揆」、#7「It Came From…」のような正調の暗黒チェンバー、ジャズ色やや強めで後半のハードボイルドなオルガンソロが本作中では異彩を放つ#8「Sonewhere In Time」、そして最後に控えるド迫力の大作#9「D.N.A.」。一曲一曲のキャラが立っていて、それぞれに解りやすい魅力がある事と、リズムの反復がもたらす中毒性が強力なため、ついついリピートを誘われる。明確な美意識が形になった、これも傑作。お勧め。


余談。お勧め、と言っても通常の流通ルートに乗っていないようなので、買う際はツチノコレーベルの通販からどうぞ。代引きあり。
余談をもう一つ。レーベルサイトには本作の紹介ページ植松伸夫の推薦文が載っているんだけれども、ポチャカイテ・マルコの音楽は植松伸夫の作る音楽と共通するところが結構ある気がする。プログレ方面の自分の嗜好は結局のところFF3〜7くらいの音楽から小学校から高校にかけて念入りに刷り込まれたものが土台な訳で、FFの音楽が好きな人はポチャカイテ・マルコも気に入るんじゃなかろうかと思う(The Black Magesは、あれはまたプログレハード色が強くて別の方向性だが)。