21グラム

父方の祖父母の家に年始の挨拶に行った際、祖母から聞いた話。
去年の秋頃、祖母の同級生の奈美さんが亡くなったんだそうな。彼女は一人暮らしで、初七日が終った後は(めいめい自分たちの家に帰っていった子どもたちによって)お骨を宅ではなくお寺のほうに置いておかれたらしい。寺に置かれた理由と言うのが、墓を建てて埋めるまでの間に、今はもう誰も居なくなった奈美さんの自宅にお骨を置いておくと色々と面倒そうだからと言うような結構いいかげんな理由のようだった。
で、それからしばらく経ったある日の事。奈美さんと祖母の共通の友人の智恵さんが、晩にお寺の近くを歩いていると、えらく綺麗な青色をした火がゆらゆらとお寺の入り口で揺れている。何じゃありゃ、と思っているとその火は智恵さんの前までするするとやってきてふいと消えていった、んだとか。智恵さんは、「ありゃ奈美ちゃんじゃった。あたしにゃすぐわかったけん、なんも怖いことありゃせんじゃった。奈美ちゃん、ありゃあ寂しかったんじゃわい、やっぱりお寺さんより一人暮らしっちゅっても自分の家がよかろうけんのう」と祖母に言ったらしい。祖母は何度も「そら本当の話か」と聞いたんだけれども、何度聞いても智恵さんは本当だと言った。そして、その話があちこちに広まって、奈美さんのお骨は彼女の自宅に戻されて、墓に埋められるまでそこに安置された。
新年早々不思議な、けれども良い話を聞いた。魂の総量と言うのは、結局のところ残った記憶の豊かさの事なのだろうと思う。


そんな訳で、今年も脳味噌サラダ外科しゅじゅちゅ(←なぜか発話出来ない)をよろしくお願い致します。