強いて言えばミルキ似

帰る途中、電車の中でものすごく見ていてもどかしい気分になる人を見た。
電車の中はかなり混んでいて、満員に近い状態だった。俺は乗車口近くの手すりにつかまって立っていたんだけれども、俺の真正面と言うか30センチも離れていないところに、中学か高校かその中間くらいの年の男が俺と吊り革につかまって立っていた。
彼の見た目。容姿。これが男か女か解りにくくどっちつかずで、見ていると何とも微妙かつ中途半端な気持ちになった。身長は164センチの俺よりやや高く、小太りで、服装や髪形にはほとんど気を使っていない結構いい加減な格好。まあ服装については俺もあまり気を使う方ではないし、自分が中学生くらいの頃は気を使わないどころではなかったので大きな事は言えないが、問題は顔だった。ナイーヴな感じで整った色白の顔立ちだが、端正な女顔と言うには何かが決定的に不足している。輪郭は小太りの体型に比例して丸く、鼻は低くて丸いが、それが容貌を損ねていると言うほどではない。眼鏡をかけていて目は割と切れ長。唇は薄い。顔のパーツや配置を一つ一つ見ていくと、これと言って問題のあるところはないように思えるが、顔全体を眺めてみると何か足りない。後もうちょっとで女に間違われてもおかしくないような綺麗な顔立ちになると思うし、今見ていても「ああ、こういう顔の女の人っているよなあ」と言うくらいに中性的ではあるんだけれども、その後もうちょっとと言うのが一体どの辺りにあるのか、眺めていても判断出来ない。
そんな顔が俺のすぐ目の前にあり、しかもほぼ満員電車なので周囲にスペースが無く、身体の向きも変え辛かったために、彼の顔を電車を降りるまで15分間見る羽目になった。何となく見てしまうような、人の目を引く顔なのは間違いないんだけれども、それと同時に見ていてもどかしい気分になった。「ジャングルはいつもハレのちグゥ」の一巻に「男か女かはっきり解らん顔は見ていてイライラする」とか「男か女かはっきり解らないと対処し辛いから苦手」みたいな台詞が確かあったが、イライラまではしなくてもそれに近いような感じ。本当に、どうして見ていてそんな中途半端な気分になったのか、どの辺に原因があるのか、今思い出しても解らない。妙に印象に残る顔ではあった。