Coaltar Of The Deepers/Penguin e.p  (ASIN:B000666T8U)

2002年のアルバム「Newave」以来、およそ2年半振りの音源。
チープなシンセ音に凶悪なリフとガツガツ突き進むリズム隊と思い切り歪ませたデス声が重なり、サビではキュートなメロディを例の中性ヴォイスがいつになく安定したピッチで歌い上げる#1「Fastest Draw(Dreamman2)」。三味線を模した音がチャンチャカ鳴るのがユーモラスな、しかしやっぱりラウドでタフなギターとドラムのコンビネーションが炸裂する、と訳の解らないノリの良さを持つ#2「Wipeout」。アラーム音とハードコアなドラムンベースとこの曲でも繰り出されるデス声の絡みがサイバーチックで、サビのメロディは爽やかで飛翔感一杯の#3「Dead By Dawn」。そして深く響き渡るアルペジオとゆらめくメロディが美しい#4「Swimmers」でチルアウト、の4曲15分。
#4以外は、デス声をメインに据えつつ要所でクリーンなメロディが歌われる、と言う明確な対比を持つ曲が並んでおり、またギターの音もここ数作に比べるとかなりブルータル。非常に攻撃的な造りだと言えるが、キッチュでちょっとベタ気味の打ち込み音を被せて、その暴力的な音でさえもポップな手触りに変えてしまうと言う彼ら独特の手練手管は冴え渡っている。ハードコア色も強いために「Breastroke」で聴ける初期の楽曲に近い手触りもあるものの、このEPの曲はデス声とクリーンな歌を使い分ける事で強面な部分とナイーヴな部分を割とはっきり分けている辺りが、以前の混沌としつつも端正な雰囲気とまた異なる点だと思う。
4曲とも、ある意味では手堅く、ディーパーズの音をしっかりとアウトプットしている感じ。彼らのアルバムを聴く度に受ける新鮮な驚きや、唖然としてしまうほどの滅茶苦茶な雑食性やギミックはここには無いが、どの曲もブレが無くしっかり地に足が付いている感じで好印象。2年以上間が空いて発表した音源だからなのか、どこか新たな決意表明のような感じもする。何にせよ、相変わらず問答無用に格好良い。