The Haunted/rEVOLVEr  (ASIN:B0002XVTU0)

北欧の爆裂デスラッシュバンドの4枚目……と言いつつ、このバンドについてはそもそも聴き始めてからまだ数ヶ月しか経っていなくて、しかも2ndは飛ばしていて未聴。まあそれはともかくとして、とにかく鋼鉄鋼鉄鋼鉄。斧か鉈か洋式の剣か、自重と腕力で断ち切る類の刃物を常に全速全力で振り下ろし続けるような強烈なリフ、刺々しいヴォーカル、驚異的にタイトで、時に軽やかですらあるほどの鋭さを見せるリズム隊。文字通りの重・金属なアルバムで、聴いていて自然と勝手に口があんぐり開きそうにになるくらいテンションが高い。
前二作でヴォーカルを取っていたマルコ・アロが脱退し、1stのヴォーカリストであるピーター・ドルヴィンが復帰しているが、バンドの看板であるヴォーカルの交代はやはり大きいようで、前作と雰囲気はかなり違う。上から鈍器で叩き伏せるような威圧感を持ち、ある意味厳粛な声質・歌い方で慟哭を吐き出していた前任者と比べて、ピーターの方が何と言うか下品で猥雑、同じ怒声にしても声質に歪み成分が少なく、ロックンロールっぽいやさぐれ感や逆ギレ感(逆ギレ感、と言うのも解り辛い言葉だが、上手く説明出来ない)がある、と思う。
突っ走る暴力の塊そのもののビート、触れれば切れる刃物のようなバンドサウンドの隙間に時折差し込まれるドラマティックなソロ、と言う音楽性は基本的に変ってはいないが、本作は全体的にそのピーターの特性に合わせて調整がなされているような印象を受けた。バンドサウンドが一塊のノイズとなって轟然と吹っ飛んで来る迫力と、いかにもスウェディッシュデス然とした暗い湿っぽさが同居したようなサウンドプロダクションだった前作と比べて、引き締まって鋭くなったような感じの音像。ややクリアで乾いていて、何とはなしにバンドサウンドに隙間感がある(この隙間感もまたロックンロールっぽさに繋がっているのかも)本作の音作りはピーター・ドルヴィンの声質とよく合っている。また、彼が血管ブチ切れそうな吐き捨てや絶叫だけでなく、普通にも達者に歌えるヴォーカリストである事は楽曲にも思い切り反映されていて、#5「All Against All」や#7「Burnt To A Shell」、#10「Nothing Right」、#13「My Shadow」辺りで時にムーディに、時に危険な匂いを漂わせながらメロディを歌う様は、怒声を叩き付けているのと同じくらい格好良い。めちゃめちゃメランコリックなギターソロが挿し込まれるタイミングや、歌メロの取り入れ方はすごく印象的で、メロディのない部分とある部分を使い分けるセンスがとても鋭いと思う。
部分的にせよメロディのある曲は、どれもあまり速くない。と言うか、明らかに速い曲は減っていて、猪突猛進な曲よりもややテンポを落としたグルーヴィな曲の方が多い。メタルコアっぽくてモダンなモッシュパートがちらほらと顔を出す事もある。だが、曲の出来自体は速い遅いに拘らず良いし、曲単位で緩急を付けることによってアルバム全体としてはスピード感と緊張感は維持されているとも思う。どの曲にもダーティで尖鋭的で不穏でキナ臭い空気が満ちていて、それがすごくクールな、問答無用にブルータルで格好良い強力なアルバム。
なお、ボーナストラック2曲がアルバム本編の途中に挿入されているが、これは少々邪魔な気がするので抜いて聴いている。無い方が流れが良い感じ。