The Crown/Crowned Unholy  (ASIN:B0002NRR74)

解散してしまったデスラッシュメタルバンド、The Crownの最後の置き土産。5THアルバム「Corwned In Terror」のリメイクアルバム。「Corwned In Terror」はヴォーカルをトーマス・リンドベルグが担当していたが、この本作では5th以外の全てのアルバムでヴォーカルを担当していたヨハン・リンドストランドが再びヴォーカルを取っているのがまずは最も大きな違い。聴き比べてみると、トーマスの方は鋭く切れ味と歯切れが良い咆哮なのに対して、ヨハンは力任せに鈍器を叩き付けるような慟哭と言った感じ。どちらがより優れていると言うわけでは勿論ないが、やはりヨハンの方がしっくり来る感じはする。それから、サウンドプロダクションが見直されているようで、より低音が強調されたように感じる。ベースの音がグリグリとリメイク前以上にドスを利かせて迫り、タイトで乾いた鳴りだったドラムはもっと荒っぽく、土砂崩れが轟然と押し寄せてくるような感じになった。以前自分で書いた「Crowned In Terror」の感想を読み返すと「乾いた音作りもこのアルバムの音楽とよく合っていると思う」と書いてあったが、心持ウェットな質感の音になっているように感じられる本作もこれはこれですごく良い。
リメイクなので当然曲は一緒。ただ、#3「Under The Whip」や#6「Speed Of Darkness」でちょっとだけメロディを歌っていたり、そこかしこで静かなパートやギターのクリーントーンを活かしてアクセントにしたところがあったり、リメイク前よりも曲を劇的に見せる工夫がなされているような感じ。で、そのほんのちょっとしたアクセントがまた格好良く、元々収録曲は粒揃いだったのがますます良くなっている。正規のヴォーカリスト(と言う言い方も変だが、トーマスは元々一作しか参加していないので)で録音し直したと言うだけでなく、リメイクする意義がしっかりと感じられる一枚。名作「Crowned In Terror」が更に強靭に鍛え上げられている。
なお、ボーナスとしてライヴDVDが付いている。すごく狭いクラブのようなところでのライヴで、映像作品としてはただ単に録っただけみたいなしょぼい作りだが、本人達はやっぱり格好良いです。
それにしても、これほどのバンドの解散の理由が「バンドの維持に疲れた」とは……。切ない。そしてあまりに残念だと思う。