SunSetLive 2004@福岡県志摩町芥屋ビーチ、9/3(その1)

家を出る前に何度も確認したのにチケットが会場入り口で見つからず、もう少しで当日券を買うハメになるところだった、と言う毎度のように繰り返す阿呆なトラブル(結局、チケットは財布にちゃんと挟まっていた)もあったが、まあ無事に会場に着いた。フェス形式のイベントに出るのは初めてで、見るもの見るものが珍しい。えらくアッパーな出店の兄ちゃん姉ちゃん、ゴミ拾いのボランティアの人、何故か海岸に設置されたトランポリン(トランポリン会社が宣伝に置いているらしい)で遊ぶ人、海岸で寝っ転がる人、二つのステージを往復しながら歩き食いをする人、全体的に「夏祭り」なんだよな雰囲気が。特に、運営側の人たちが真面目にやっているんだけど皆うきうきしていている感じで、出店やってる人になるとむしろ自分達の方が客より楽しんでいるように見えた。まあ、祭りってのはそういうものかも知れないが。
海水浴場そのまんまの会場に着いてから、俺よりは幾らかこの享楽的な夏のノリに馴染んでいるように見える連れと、まずはサフランライスとカレーと炭焼きのチキンを盛り合わせた「ジャークチキンプレート」と言う料理を食いながらハイネケンを飲んだ。そのプレートを俺に売ってくれた兄ちゃんは、料金は後払いと言っていたのに食器を返しに行っても代金を請求しなかったので「金、払い忘れてましたんで」と言ってから代金の700円を俺が渡すと、「あー、ウチらが忘れてたんだからわざわざ払わなくてもいいのに」と言って笑っていた。何と言うか、出店も客も全体的にそういう雰囲気。割と何でもありっぽい。もっとも、運営スタッフの人たちはやっぱりきびきびと動いていたんだけれども。
今日のお目当ては、まずは勝手にしやがれ、次にドライ&ヘビー。そして、これは観られればラッキーかな、位に思っていた東京事変。その合間合間にも色々見ようかなと思っていたが、皆が海岸で割とやりたい放題くつろいでいるので、それに釣られて海でぼんやりしていた事も多かったように思う。海際に居ても、ビーチステージ(こっちがセカンドステージ的扱い。メインは海岸とは少しだけ離れた空き地に設置されたパームステージ)でやっている音楽は聞こえるし。勝手にしやがれが始まるまでは夏っぽい気分でも味わっていようかなと思っていたが、パームステージから聞こえてくる音が格好良さそうだったので、少し観に行く事にした。


>SOIL & "PIMP"SESSIONS
パンフレットには「ハードコア・ジャズ」と説明があって、確かにその通りの爆音ジャズ。トランペット、サックス、ピアノ、ベース、ドラム、それにアジテーター(と言うのか、叫んだり煽ったりする)の6人編成。ハードコアと銘打たれているだけあって、かなりゴリゴリした強面な音なんだけれども、カールスモーキー石井とパパイヤ鈴木を足して2で割ったようなアジテーターが煽るのが上手いのも手伝って観ていてすごく楽しい。まさにハードコア的でヘットバンギングしたくなるような突進もあれば、ラテンっぽくてエロエロな横ノリの曲があったり、客に「Soil!」と拳を突き上げさせるような曲があったり。半分弱しか観られなかったんだけれども、少しの時間でも気持ちよく身体が動かせた。ピアノの人が格好良かったな、細身で長髪でいかにもやさぐれジャズのピアノ弾きって感じで。ピアノを弾く人はああでなくては、などと思いながら観ていた気がする。このバンドも最初から観れば良かったかもしれない、と終わった後で少し後悔。


SOIL & "PIMP"SESSIONSが終わり、パームステージからぞろぞろと人が出てゆく流れに乗って俺と連れも一旦退場。次は勝手にしやがれだが、まあそうしゃかりきに前に行って観なくても良かろう、と言う判断で、特に場所取り等はしない事にした。で、この合間の時間にラムコークとタコスを食べながら己がここに居る事のアンバランスさについて考える、と言う冒頭の場面があった。だってもう、本当に周りはどこもかしこも男も女も露出度高めだったりジャマイカンカラーだったり東京事変命! だったりするんだよ。どのグループとも外れているなあ、と連れと話し合っていたように思う。
そうやってしばらくまったりしていると、パームステージから何やら管楽器とドラムの騒々しい音が響いてくる。あ、もう始まったのか……セットチェンジがかなりスムーズに行っている様子。急ぎ足でステージに向かった。


勝手にしやがれ
ステージには、やはりSOIL & "PIMP"SESSIONSに比べるとかなり多く客が入っているのが一目でわかった。人気あるんだなあ……俺が入った時に演っていたのはたぶん2曲目の「メランコリック・デカダンス・ピエロ」で、曲名を連呼するサビが耳から離れないこの曲はやはり生で聴くと音源よりも更に格好良い。
壇上の7人……トロンボーン、トランペット、サックス×2、ベース、ドラム兼ヴォーカル、キーボード……は、スーツ姿でびしっと決めていて絵に描いたようにチンピラ臭くて「悪い大人」だった。特にトロンボーンの人は恐ろしく細い身体で矢沢の栄ちゃんばりにポーズを決めたりしてて個人的には一番クールだと思う(一般的には、格好良いのとクサいののギリギリのラインかも知れないが)。キナ臭い格好良さとどこかセンチメンタルでナイーヴなところが交差するハードボイルドでささくれ立ったスウィングジャズにしてパンクロック、と言う彼らの音楽と、彼らの立ち居振る舞いや出で立ちが完全にシンクロしている感じ。で、ドラム兼ヴォーカルと言うのは実際に観るまでは叩きながら歌うってどれくらい出来るもんだろうかと少し疑問に思っていたんだけれども、普通に叩きながら歌ってました。凄い。あれだけ求心力のあるビートを叩き出し、時にはソロもブチ上げながら、きっちりとキャッチーなメロディを追う聴き易いがなり声。凄い。
ある程度以上聞き込んだのが「デカダンス・ピエロ」一枚のみなので、知らない曲も結構演奏されていたが、知っている知らないは殆ど問題にならない感じで、良い意味でどの曲も似ているのでリズムにも乗りやすい。けれども、知っている曲が始まるとやはり自分内のボルテージは上がった。「スーサイド・スウィング」「オリオン」「ロミオ」そして「奴隷」。本当にどれも格好良いとしか言いようがないくらい格好良かった。最高。
これと言ってMCも無く、ストイックに曲だけやって帰って行ったんだけれども、最後にドラム兼ヴォーカルが退場する時にふら付いて倒れて、他のメンバーに手を引き上げられながら半ば引きずられるように退場して行ったのが印象的だった。精根尽き果てたと言う感じで、そのよろよろの姿もまたクールだったと思う。


ここでしばらく休憩。ビーチステージから「かりゆし」の沖縄っぽいメロディが流れて来るので、そのまったりした流れに任せて再び海でぼけっとする事にした。
周りを見ていて思っていたんだけども……海って、とことん人をベタな行動に走らせるんだなあ。波が靴を舐めるのをぎりぎりで避ける遊びをする人、ふくらはぎ辺りまで海に入って水の掛け合いをする人、友達を海に放り込もうとする人、海から拾ってきたワカメで即席ドレッドになって写真を撮る人、「こいつぅー」とか言いながら(本当に言ってた)波打ち際で追いかけっこをする人。もう少し斬新な海の楽しみ方は無いのか、と思うくらい、見る人見る人がベタ。でも楽しそうだからいいか。かく言う俺も、家からビーチサンダル履いてきていたのでカーゴパンツを膝までめくって海に入り、温度が丁度良かった事もあって感動的に気持ち良い潮水を堪能したりしていたんだから同じか。あと、トランポリンはやりたくてやりたくて仕方なかったんだけど、恥ずかしかったので出来ませんでした。
そんなこんなで海辺にて茫洋としている間にも、ビーチステージからは女声ヴォーカルの気持ち良さそうな歌声が、パームステージからはけたたましいサックスの音と何やら凄まじく大きいドラムの音が聞こえてくる。今あっちでやってるのはThe Travellersだよなあ、でももうしばらくのんびりしていようか聞いたことのないバンドだし、と思っていたが、段々とパームステージから鳴り響く轟音が気になってきたので、砂浜に根が生えかけていた腰を引き抜いて移動する。


続きます。