The Dillinger Escape Plan/Miss Machine  (ASIN: B0002FQMX2)

1st「Calculating Infinity」から全く別の姿に変貌を遂げている、と言って良いと思う。聴いた人誰もが思う事だろうけれども、圧倒的に聴きやすくキャッチーに、ポップにすらなった。前作が古今東西のありとあらゆる重火器や爆弾による消し炭も残さない一斉掃射・絨毯爆撃だとしたら、本作は出演者が揃いも揃って重火器ブン回すサーカス、と言った感じ。すみません何の事だか分からないですね。いや、要するに攻撃性をキープしつつ解りやすさやエンタテインメント性が大幅に増した、って事が言いたかった。
マイク・パットンと組んで作った傑作EP「Irony Is The Dead Scene」の影響はやはり大きかったのか、爆発的で八方破れで変態的で凶悪で無軌道な演奏の上に、絶叫を基本としながらも演劇的な歌い回しをも多様するヴォーカルが乗るスタイル(あと、ストリングス音の使い方辺りも)は、Faith No Moreの変態ポップを直接連想させるところがかなりある。また、転調やリズムチェンジがやたら多く、細切れなパートが幾つも幾つも連なって曲が出来ているのは相変わらずだが、本作は曲がきちんと曲として完結しており、なおかつシンプルにドライヴしたりファンキーに跳ねるリズムも多いので、前作のように「何をやっているのかは全く解らないが恐ろしく暴力的なのだけは解る」と言う感じではない。
新たに加入したヴォーカルが、本作をキャッチーなアルバムとするのに大きく貢献していると思う。咆哮したり嘔吐したり絶叫したりエキセントリックに歌い上げたり、とバンドサウンド同様忙しないこのヴォーカリストのパフォーマンスが中心に据えられた曲が多いため、アルバムが全体的にポップな作りになっている。ポップになったと言っても、バンドサウンドの高機動殺傷マシーンっぷりは健在だし、曲を構成する細かなパーツや音の鳴りを取り出してみればやはり異常に細密かつ凶暴だが、パーツの組み立て方がストレートになった結果解りやすくなった、と言う感じ。まるで歌ものヘヴィロックのように思える箇所も沢山あるし、「ケイオティック」と言う感じでもなくなっているので、表向きは大人しくなって鋭さが減退したようにも思えるが、音像に封じ込められた膨大なエネルギー量は前作に負けず劣らずだと思う。メロウなパートにも、今にも爆発しそうな力を溜めている気配はひしひしと感じ取れる。
また、前作では暴虐を極めた作りの中にどこか理知的で繊細なタッチがあったように思えたが、今回はそれをあまり感じなかった。これは、多分メロディアスになった事で神経質なイメージが薄れた事と、メロディの質自体に肉食性でスケールの大きいアメリカ的なところが感じられるために、繊細な印象が後退している事によるもののような気がする。どちらが良い悪いという話でもないが、面白い変化だと思う。
これ以上は、あまり書くことがない。極めてアグレッシヴな演奏と獰猛ながらもメランコリックなメロディががっちり噛み合っためちゃめちゃ刺激的で格好良いロックアルバム、と書いておけばもう十分のような気がする。特に後半は非常に印象的なメロディを持つ曲が多く、#8「Setting Fire To Sleeping Giants」〜#10「Unretrofied」の哀感溢れるメロディの流れは美しい。傑作。