肉の掟

専門学校からの帰りがけ。晩飯は肉にしようと思い立ち、「肉と殺意」の時と同じ焼肉屋に入った。腹が減っているので多めに食べよう、と塩焼きホルモン定食とアカフク(そういう名前の肉。安くておいしい)単品を頼み、店内に流れるユルいレゲエを聴きつつ、どうしてここはいつもダブとかレゲエとかスカがかかってるんだろうと思いながらぼけっと待つ。しばらくすると、まず塩焼きホルモン定食が来たのでそれを食べ始めた。美味しいものを目の前にしていると「焼肉」「美味い」「塩ダレ」みたいにほとんど単語レベルでしか思考出来なくなるので、無心に食べる。気が付いたら焼野菜とホルモンとライスとスープを綺麗に食べ終わっていた。
で、塩焼きホルモン定食を食べ終わってから気付いたんだけど、アカフクが来ない。俺より後に注文したカウンター隣の客のミックス定食はもう来ているので、注文が忘れられてしまってるんではなかろうか、と店員に聞いてみたら、案の定そうだった。店に入った直後は腹がかなり減ってたから勢いで定食以外に単品焼肉まで頼んだものの、定食を食い終わってそれなりに腹はくちくなったのでアカフクは頼むの止めとこうかな……と思ったが、食べたかったのも確かなので、初志貫徹の心持ちで結局アカフクを頼み直した。もうしばらく待つ。
数分後。アカフクが運ばれて来たところでまた気付いたんだけど、定食についてたライスはとっくに食べてしまったからご飯がない。俺の中には「肉は米と一緒に摂取しなければ勿体無い」と言う大原則があって、これは基本的に覆せない。かと言って、これからライスをもう一杯頼んで食うとなると腹に入り切らない。どうしたもんか。
……。
俺、どうして平日の焼肉屋のカウンターに独りで陣取って焼肉食って日本酒飲んでるんだろう。
あまり深く考えない事にしたい。