注文の多い内科医院

人間ドッグ
街を歩いていたら、「人間ドッグ」と書かれている看板を見かけた。いつもの見間違いかと思ったのでまじまじと見つめたが、確かに「人間ドッグ」と書かれてある。しかもその看板は内科医院のもので、「内科/泌尿器科/胃腸科/人間ドッグ」と言う風にでかでかと書かれてあったのだった。
人間ドッグ」と言う間違いは、たぶん「ッグ」で終わる英語が発音し辛いため、実際喋っている時は半ば以上「ック」と発音するクセが日本人にはある、と言う事が逆に作用した結果だろう。恥ずかしいから「ショルダーバック」「ミスタービック」「ホットドック」などと書いてしまわないようにしよう、と言う意識が働き過ぎて、「人間ドッグ」「ビッグカメラ」と書いてしまうのに違いない。その内科医院の看板をぼんやりと見上げながら、そんな事を考えた。
だが、本当にそうだろうか。この看板が単にそういう間違いの元に描かれたと言う保証はなく、ここは人間ドックをすると見せかけて実は人間ドッグの施術を行うところであるという可能性は排除できない。看板の違いに気付かなかった人や、まさしく俺のような推測をした人を呼び込んで行われる人間ドッグ。分娩台に犠牲者を固定し、前部前頭葉切截術を施したのちに脳内に何かを埋め込み人間ドッグ化する。社会的地位が高く、なおかつ少々特殊な趣味嗜好を持つ人たちがしばしば連れを伴って訪れる内科医院。
……。
俺も、理系に進めば良かったかもしれない。