Blindness Keeps The World Peaceful

部屋の整理をしていた時の話。
本棚に積もっていた本を整頓しようと棚に手を伸ばした時、手元が狂って棚のすぐ脇にかけてあるカレンダーを手で払い落としてしまった。掌に載せていた本の束を一度棚に戻し、しゃがみ込んでカレンダーを拾い上げた時に、はたと気付いた。カレンダーを棚に止めていた押しピンが見当たらない。
本棚は部屋の隅と机に挟まれていて、そこかしこに狭くて細い隙間が床と壁と机の間に空いている。確かに押しピン大のものが床を転がる軽い音を聞いたから、床に落ちたのだろうとは解る。ただ、見当たらない。そう遠くに転がったはずもないだろうから本棚のすぐ近くに落ちているはずなんだけれども、どこをどう探しても押しピンは見つからなかった。あれをうっかり踏んでしまうと恐ろしく痛い事にならないとも限らないのに、何回探してみても押しピンがない。おかしい。分子分解されたのでもない限り、俺が探した範囲に落ちていないはずがない(分子分解されていたのなら、それはそれで問題ないが)。おかしい。
……。
俺は、予備の押しピンを取り出し、それを使って元の場所にカレンダーをかけ直した。
これで元通り。何も心配する事はない。ちゃんと俺の目の前に、カレンダーを貼り付けるために使う押しピンは実在している。問題ない。



今後、この日記の更新が前触れなく十日以上滞る事があった時は、足の裏に刺さった押しピンが脳にまで達してしまったと思っておいて欲しい。