西尾維新/ネコソギラジカル(上)  (ISBN:4061823930)

戯言遣いシリーズ、最終章の三分の一。序破急の序の部分だからなのか、あんまり捻れていなくてするすると読めた。いーちゃんが戯言を撒き散らしたりぐだぐだしたりする部分が少ないし、作中で何度も「加速」と言う言葉が使われている通り、話の展開は(ご都合主義な部分も含めて)スピード感があるなあ、と言う感想。十三階段とか世界の終わりとか、また色々と大風呂敷は広げているものの、クビツリハイスクールの辺りから徐々に見えて来た流れの通り、割と真っ当で普通のハッピーエンドにたどり着きそうな伏線が張られている……気がするが、読後感のあまり良くないトゥルーエンド路線や、もっと読後感の良くない鉄の心エンドに一気に持って行かれるようなどんでん返しが待っている可能性も十分過ぎるほどあるので、あまり安心して続きが待てない感じではある。
有限と微小のパン」のあとがき(「森博嗣ミステリィ工作室」に収録されているやつ)に、S&Mシリーズは「犀川の喪失と、萌絵の解放の物語」とあって、喪失と解放の物語と言うのは多分この戯言シリーズにもそのまま当てはまるとは思うんだけれども、誰が犀川で萌絵で四季で琥珀(まちがい)なのかはまだはっきりしない。それが中巻・下巻ではっきりすれば良いなあと思いつつ、どうまとめるんだろうか、と続きが楽しみ。
何だかんだ言って本当に続きの巻を楽しみに待っている本って、今はこれと「フルメタル・パニック!」と「バッカーノ!」と、それから新SWリプレイくらいだなあ。何にせよ、もっとちゃんと本を読まねばならない、と思い続けて早四年。全然達成出来ていない。


どうも、マトモな感想になってないな。やはり本の感想は難しい。まあ、単純にだらだら飲みながら書いているから、と言うのもあるんですが。


余談。日本語ヒップホップを好んで聴く方の日記を読んでいたら、西尾維新について「やっぱりこの人は言葉遊びが上手い」みたいな事が書いてあって、すごく納得した。執拗に言葉を重ね、韻を踏みながら強引にリズム感を作り出してゆく手口は、確かにヒップホップのそれに近いのかもしれない。自分自身、改めて考えてみると話の流れや繰り返される自己撞着よりも、もっと単純に言葉のノリの良さやネジの外れたネーミングセンスを楽しんでいるようなところがある、ような気がする。
もう一つ余談。戯言シリーズ中村博文の絵をあててみたらどうだろう、などと今急に考えたりした。竹さんのポップでえらく醒めている絵とは全く逆方向の意味合いで、この話にしっくり来そうな気がする。何でそんなことを考えたのか、自分の頭の中を再検討してみると……たぶん、蓬莱学園のカオスとなんか似てる、と思ったんだろうな。あと、中村博文Type-Moonのアンソロジーで表紙を書いたりしてるからそっち関係でもなにか頭の中で繋がるところがあったはず。