2004年ベスト

ざっくりと今年特に印象に残ったものについて書きたい。一応順番をつけてはいるものの、勿論どれが劣っていてどれが優れていると言う訳であるはずもなく、どれも素晴らしいアルバムだった。


1.Pain Of Salvation/Be  →感想
……今年の私的ベストはやはりこれ。「聴く映画」「映像的な音楽」「サウンドトラックのよう」と形容されるアルバムは沢山あるが、これほど明確で具体的なフレーズ・メロディ・展開でもって聴き手に下駄を預ける事なく映像を喚起する事の出来るアルバムは数少ない。


2.Downy/無題(4th album)  →感想
……リズムが段違いにタフになり、曲のバラエティが増し、メロディもキャッチーに。一曲一曲が短くコンパクトになったのもあって断然聴きやすくなった。すごく躍動的なのに相変わらず暗くてダウナーで、文句無く格好良い。これも本当によく聴きました。


3.Misery Signals/Of Malice and the Magnum Heart  →感想
……上のDownyもそうだが、浮遊感や解放感のあるメロディとヘヴィで高機動なリズムの組み合わせが大好きで、これはそんな自分の好みにずっぱりハマった一枚だった。やたらと忙しないくせに聴けば聴くほど深くて旨みが出て来る感じなのも良し。


4.Syrup 16g/Mouth To Mouse  →感想
……良い意味で特別でなく、割と普通のポップアルバムだったが、そのおかげで風通しが良い。シロップはメロディと言葉との噛み合わせがすごく良いなあ、と言うのが改めて感じられたアルバムで、飽きずにずっと聴けた。ライヴを二度見たのも印象深い。


5.The Haunted/rEVOLVEr  →感想
……スラッシュメタルはパンクをルーツに持つ、みたいな話は今まで知識として持っていただけだったけれども、本作を聴いて何となくそれが実感出来た。都市的な冷たさとヒリヒリするような焦燥感を強靭なヘヴィメタルサウンドにブチ撒ける格好良さ。


6.The Dillinger Escape Plan/Miss Machine  →感想
……聴いていて、あまりの迫力に背筋が寒くなると同時に強烈過ぎて笑いが出そうになった前作から、かなり聴きやすくなったけれども、やっぱり訳が解らなくて最高だと思う。キャッチーになったのと同時に、バカっぽいところも露わになってるのが素敵。


7.Nightwish/Once  →感想
……オーケストラ+メタル、と言う方向性に微塵も迷いが無くて、世界観に没入するのに何も邪魔が入らない。脂が乗り切った、みたいな表現がぴったりくるような充実作だった。今までも良かったけれどもこのアルバムで二段飛ばしくらいして大きくなった感じ。


8.Isis/Panopticon  →感想
……聴く前はもっとドロドロで病的で痛いヘヴィネスかと思っていたんだけれども、良い意味で裏切られた。壮大で美しくて深い、そんな重さ。音の塊が巻き起こす渦の半径はとても大きい。悲壮だけれども光も射して来るメロディがまた良かった。


9.Disarmonia Mundi/Fragments Of D-Generation  →感想
……Soilworkフォロワーなのは間違いないけれども、キーボードの使い方やメロディセンスにはギラリと光る独自性もあった。そして何よりあらゆる面で隙が無く、全体像はポップですらあった。メタルコア勢とはまた違った意味で、2004年の最前線だったように思う。


10.渋さ知らズ/渋星  →感想
……一つ一つの音がめいめい好き勝手な方向を向いていて雑然としているのにこの破壊力。音像に力が溢れていて、有無を言わせない迫力があった。もうずっとライヴを観たいと思っているんだけれども、やっぱりそのためには本州まで行かないといけないんだろうか。


Ex.The Crown/Crowned Unholy  →感想
……The Crown最後の一撃。リメイクアルバムって事で10枚からは外したけれども、これもまた自分の好みそのものだった。もう新しいのが聴けないと思うと本当に残念。
Ex.Meshuggah/I  →感想
……一枚一曲21分。これ以上のどんな曲があるのか、ってくらい神懸り的。



以下10枚も順不同。これらも、上に挙げたものに何ら劣ることのない傑作揃いだった。
Acidman/Equal  →感想
……感想ではいまいちと言っていたがずぶずぶとはまり込んで行った一枚。深い水と光。


Magma/Kohntarkosz Anteria
……もくしくしもしもくくもしもしくしくも。徹頭徹尾意味が無いのにこの迫力と完成度。


Orange Goblin/Thieving From The House Of God
……リフ、グルーヴ、メロディ全てが本当に良く練られていて、かつ粗野。最高。


In Flames/Soundtrack For Your Escape  →感想
……今年のヘヴィメタルの象徴の一つだと思う。そうなるだけの格の違いが確かにある。


Scarve/Irradiant  →感想
……人力インダストリアルなリズムと硬軟ツインヴォーカルの絡みがとにかく美味だった。


Zazen BoysZazen Boys II  →感想
……無印より長足の進歩。他に挙げた化物連中とも肩を並べかねないラウドネス


Nasum/Shift  →感想
……鋭さ熱さ冷たさ破壊衝動哀切の最も効率的な表現手段。スタイリッシュですらある。


Angra/Temple Of Shadows  →感想
……一枚で一曲、かつ一枚で十三曲。多種多様、かつ首尾一貫。優美を極めるメタル。


The Music/Welcome To The North  →感想
……ますますハードロックに接近して嬉しい限り。ダウナー色が消えたのも成長の印か。


Lamb Of God/Ashes Of The Wake  →感想
……貫禄が漂い始めたのが凄い。頭一つ突き抜けた印象がある暴虐メタル。



こうやって振り返ってみると、去年に比べて洋楽と言うかメタルを主にしていたと言うのがはっきり解る。様々なヘヴィミュージックにも少しずつ聴いて行った事で、自分の中でのヘヴィメタルの定義が広がった年だったように思う。一方、邦楽は新譜を聴く事はあまり多くなく、どちらかと言えば数年前のものなどを聴いていた事が多かった気がする。色々と聴いていく中でレゲエとかがダブとかに対する抵抗が薄れてきて聴けるようになって来たのが結構自分としては大きかったので、来年はそっち方面にも手を出してゆくかもしれない。メタルコアの流れが来年どうなっていくのかもちょっとずつ見ていきたい、と思う。
何にせよ、今年も色々と良い音楽が聴けた。来年もまたそうでありますように。


それと、2004年を振り返るという意味ではHEAVYROCK JUNK-YZさんの2004年HEAVYROCK年鑑が圧巻なので、是非ご一読を。