アンダーエッグ24

夕食をあるラーメン屋で摂った。食券の自動販売機でラーメン+カルビ丼の定食630円を買う。700円を自販機に入れたので、70円が返って来た。その70円を手に取り、ふとメニューを眺めると、「ゆでたまご 60円」とある。定食が来るまでの暇つぶしにしよう、と思い立ち、お釣りでゆで卵の食券を買い足す事にする。
ゆで卵の食券をおばちゃんに渡すと、おばちゃんは左手で食券を受け取り右手でゆで卵が乗った小皿を渡してくれたので、早速卵の殻にヒビを入れて剥き始める。剥き始める。剥き始める。剥き……あの、殻と白身の間にある皮膜が上手く剥けない。いつまでたっても皮膜が剥がれてくれない。剥き。剥き。剥き剥き。ムキィィィィ。
などと、ゆで卵相手に格闘している間に、存外早く定食が来てしまった。そこで一旦ゆで卵は置いてラーメンを食えば良いんだけれども、「ゆで卵はラーメンを食べる前に食べる」と言う当初の目的から外れるのは負けを認めてしまう事になる気がしたので、そのまま己の不器用さを呪いながら卵の殻を剥いた。強引に指で皮膜を破ろうとしたため(何となく不適切っぽい表現だがそうとしか言いようがない)白身が少し殻に張り付いてしまった。切ない。
しかも、ゆで卵にかかりきりだったため、ラーメンが少し伸びてしまった。
……。
訳の解らない敗北感を感じた。もっと切ない。



ゆで卵の殻が上手く剥けずに悔しい思いをする、と言うのは子供の頃からちょくちょくあって、つまり俺は大層不器用な子供だった。大人になれば、これくらい何時でも簡単に出来るようになるに違いない、と信じていたしそうありたいと思っていたけれども、実際のところ二十歳を過ぎて数年経ったところで子供の頃と大して変ってはいない。
今日で二十四歳になりました。もう生まれてから干支が二周もしてしまったが、変るべきところはさして変っておらず、けれども最も良い人生の時期からは外れてゆきつつあるのは日々感じられる、と言う難儀なお年頃。その難儀さ寂しさ漠然とした空虚さもまた楽しもうと思えば楽しめる、と言えるのは、柳の余裕か、それとも竹槍の虚勢か。まあ、何にせよ、また一年。