ぬか地獄

昨日。昼食のインドカレーを食べに行こう、と車を運転していた時、ちょっと遠くの道路脇に建っている店の上に、「ヌカヘル」と大きく書かれている看板を見かけた。その看板は、他の看板や周囲に植わっている木に下部が隠れていて、「ヌカヘル」の下にも続いているらしい文字が、俺の方からは見えない。ヌカヘルの下に付く言葉って何なんだろうな……と考えつつも道なりに車を運転して、徐々にその看板に近づいてゆく。看板が全て見える角度にまで近づいたので、再びその看板の方に目をやると、こう書かれてあるのが見えた。
ヌカヘルシー
見るからに「ヌカヘル」よりも「シー」が小さい。
……。
まあ、何と言いたいのかは一応解る。ヌカ・ヘルシー。米ぬかで肌は艶々(漫画家ではない)、奥さん米屋です(あれではない)。要するに、米ぬかを使った健康食品か何かなのだろうと思う。
ただ、一体何故「シー」の文字が小さいのか。「シー」は、まるで集合写真を撮影する日に休んでしまった小学生のように、看板の隅っこに申し訳なさそうに小さく書かれてあった。が、結局、恥らうように小さな「シー」についての疑問が解けないままに、俺はその看板が掲げられている店を通り過ぎた。
唐突に、「シー」についての一つの仮説を思いついたのは、インドカレーも食べ終った帰り道の事だった。あれは、看板のサイズと文字の大きさをちゃんと測って一文字分のサイズを決めずに「ヌカヘル」まで勢いで書いてしまったために、「シー」は小さく書かないと看板のサイズ内に文字が収まり切らなかったのに違いない。仮説と言うか、多分これが正解。
……。
看板の書き手の無計画さを指弾しようかと思ったが、高校の頃の習字の時間でそれと全く同じ事をしていたのを思い出したので、止めた。人間、誰にでも間違いはある。


しかし、自分で書いておいてなんだが、「恥じらうように小さなシー」ってかなり危ういフレーズだと思う。嫌いじゃないです、そう言うの。そして、そう言う風に考えると、何気なく見出しタイトルにした「ぬか地獄」と言うのもWAM(何故こんなものがキーワード登録されているのか)な感じで悪くない。