丘ファーザーの夏休みと昼食

俺は、祖父母の家に間借りと言うか居候させて貰っている。で、祖父母宅兼俺の居候先に、一昨日から昨日にかけて俺の母親の弟の息子、祖父母にとっては孫、要するに従兄弟二人が泊まりに来た。従兄弟と言っても上は7歳下は5歳で、俺とは随分年が離れている。両親の手を離れて子供だけで外に泊まるのは初めてだという事で、それなりに二人とも緊張はしていたようだが、祖父母がしっかり面倒を見ていたし俺も遊んでやったりしていたので、寂しがって夜になってから泣き出したりはしなかった。
そして、一晩空けた昨日。急に祖父母ともに用事が出来て、俺は数時間一人で従兄弟二人を見る事になった。俺だけで従兄弟を見るのは初めての経験ではあったが、適当に走り回らせたり、塗り絵の採点をしたり、メタルを聞かせて一緒にヘッドバンキングしたりして(子供はグルーヴィなリズムよりスクエアで直線的なリズムを好む傾向にある事が解った)遊んだりして、そこそこに世話が出来たと思う。
そうこうしているうちに昼が近くなったので、ハンバーグ屋に連れて行く事にした。車の中でも従兄弟達は騒がしいが、まあ気になる程でもないので運転の邪魔をしない限りは好きにさせておく。20分くらいでハンバーグ屋に着き、店内に入り、店員に案内されて、従兄弟二人を連れてテーブルに就いた。お冷を飲んで一息吐いてから辺りを見回すと、やはり夏休みだからか親子連れが多い。盆休みがまだ続いていると言う事もあって、父親が子供を連れているテーブルもあちこちで見かけた。で、自分達を省みると、俺が23歳、従兄弟のちっこい方は5歳。
思わず、一人で苦笑してしまった。これ、傍目には親子連れに見えるんだろうなあ……。子供の相手をするのは嫌いではないが、流石に親子と思われるのはいくらなんでも複雑な気持ちになる。知り合いに見られたら指差して笑われそうだ、とも思うし、そもそも俺だって自分が親に見られる、と思うとどうしようもなく可笑しいし。
それでも、従兄弟にお子様ランチを食べさせながら、いつかは本当にこういう事を親としてするようになるのかも知れない、とはぼんやりと思った。今はまだ、自分がお腹を痛めて人の親になるところは全く想像出来ないにしても、いずれ今日のような光景が日常となる日々が来る事もあるのかも知れない、と。
ハンバーグ屋から帰った後、厚手のビニールを剣の形にして空気を入れたような玩具で沢山叩かれたので、泣き出さない程度に報復しておいた。