真夜中と蝙蝠

俺の部屋は二階にあって、ベランダが付いている窓があるんだけども、その窓に向かって飛んできては網戸や窓にぶつかってキチキチ鳴く、と言う事を何者かが何度も繰り返している。時間は、丁度日付が変わった頃。
何となく、網戸を風車か何かと勘違いして(二重に間違っている)さっきから突撃しているのはコウモリかな、と思った。コウモリは結構どこにでも住んでいるものだし、丁度網戸や窓に当たっている音が、コウモリサイズの大きさ・重さだったように思えたので、それ以上は特に考えずに放っておいた。
チキチキ、チキチキ。ギチギチ。ギチギチ。ギチギチ。
あああああ五月蝿い。いい加減にしろよと思いつつ椅子を立ち、窓からベランダを覗き込むと、そこにいたのはセミだった。コウモリではなく。
よくよく考えてみると、この時期なんだからまずセミが思い浮かべられるべきだし、実際ギチギチ言っていたのはセミだった。どうして俺は真っ先にコウモリを連想したのだろう。
何か、自分の心象風景がそこにイヤな形で現れているような気がした。前世でコウモリに縁があったとか(夜中で微妙に思考が変なので、筋の通らないこんな事を普通に考える)。
……。
どうせなら、酷い聞き間違えをして愚かだと思われないように、コウモリみたいな耳が欲しい。