ワンサポナタイミン・フクオカ

祖父母と外で昼にカレーを食べていたら、祖母が「前に、中洲にあるナイルカレーで食べたっちゃんね」と言い始めた。
「前って、どのくらい前?」
「お爺ちゃんと結婚する前だから、もう50年くらい前かねえ」
「そりゃ随分と前だなあ……」
何でも、結婚する前は大分に住んでいた祖母は、結婚する事が既に決まっていた祖父に福岡まで会いに行ったんだそうな。夕方に夜行列車に乗って朝に福岡に着く、と言った感じだったらしい。福岡に着いたら祖父と落ち合わせて、二人で中洲川端を手を繋いで歩いて、そこでカレーを食べて。で、しばらくしてから、祖母は大分まで列車で帰ったんだとか。当時は特急なんてないから、鈍行で7時間くらいかけて。福岡に居た時間は正味5〜6時間で、トンボ帰りに近かった。そんな話を、祖父と祖母は少し照れながら聞かせてくれた。
現在祖父と祖母は75歳と71歳、と言う事は50年前なら25歳と21歳か。二人とも、今でこそどこからどう見ても普通の爺さん婆さんだが、若い頃はそれなりに格好良かったりハイカラだったりしたのかも知れない。それで、中洲川端でカレー食べてデート(のためだけに14時間くらいかけて大分〜福岡間を往復)と言うのは何だか微笑ましいと言うか、とても素敵な気がした。
そういう出来事一つ一つの積み重ねの上に俺が存在している、と言う事を昔話を聴きながらぼんやりと思うのは、なかなか悪くないと思う。