覇気のある暮らし・実践編

「お前には覇気がない。なんかじじむさいし」
って言われた。
……。
……。
そうかなあ。
……。
……。
は。
しまった。
考え込んでしまって即否定しなかった時点で、認めたも同然だった。視線が痛い。


しかし、ただそのまま認めてしまうのも業腹なので、覇気のある感じと言うのを幾つか考えて実践する事にする。幸いにも、簡単で効果的で誰にでも出来そうな対策をすぐに考え付く事が出来た。
で。
自分が考える覇気のある歩き方を実践すると、何かが間違っているギクシャクとしたグースステップのようになった。
自分が考える覇気のある喋り方を実践すると、無理に滑舌良く喋ろうとしたせいで詰まったり舌を噛みそうになったりした。
自分が考える覇気のある立ち姿を実践すると、変な力が入ったせいで背筋が痛くなった。
自分が考える覇気のある顔立ちを実践すると、メリハリのある表情を作ろうとする余り鼻の穴が無駄に膨らんだ。

……。
どうも、上手く行かない。
覇気のある感じ、と言うのは、難しいと思う。とても難しい。
そもそも、冒頭の台詞を吐かれたのはもう二週間も前の事で、それについてずっと考え込んでいる時点でもう覇気に欠けている。