兄弟愚鈍

弟を連れてうどん屋へ行った。
俺はそのうどん屋へ行くと大抵は力うどん(餅が揚げてあって美味い)を食べる事にしているんだけども、普段は東京に住んでいる弟はあまりここへ来た事が無いのですぐには決められない様子。何にするか、と弟がメニューを真剣かつなんか間抜けな顔で睨んでいる最中に店員が注文を聞きに来た。
「ご注文お決まりでしょうか?」
「力うどんお願いします」
「え、あ……力そ、ばで」
力うどんにするつもりが俺に機先を制された形になったので、別のものにしようとしたが咄嗟に考え付かず、中途半端に力そばを頼んでしまったらしい。
しかし、普通、先に言われたくらいで注文変えようと思うか? 俺は、必要な時なら躊躇わずに他人に追随出来る自信がある。それどころか、不必要な時に不用意に他人に追随する自信すらある。そんな兄を持っていると言うのに。弟、弱過ぎ。
と言う訳であまりに情けないその言動にツッコミを入れまくってやった訳だが、そしたら家に帰ってから複雑怪奇な関節技を食らった。痛。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い。
結局、単純暴力(関節は極めている方が痛みを好きなだけ持続させられるからタチが悪い)によって屈服させられる。だが、単純暴力に弱いより意志が弱い方が弱いので、弟の方が俺より弱い事がはっきりした。
……。
ただの負け惜しみだと思う。