THE BACK HORN@1/22、福岡DRUM Be-1

すごくいいライヴだった。いや、曲の内容云々が楽しいとか言うんではなく、純粋にバンドの立ち居振る舞いや繰り出される曲の良さに心底入り込んでゆけたと思う。やった曲は新譜「イキルサイノウ」から「プラトニックファズ」を除く全曲、「涙がこぼれたら」「サニー」「幾千光年の孤独」「アカイヤミ」「ひとり言」、アンコールは「ゲーム」「無限の荒野」……一つ二つ抜けているかもしれないが概ねこんな感じだったと思う。客層は、大体俺の二つ三つ下、20くらいが平均年齢か。高校生も多そうで全体的に若い人が目立ったが、その一方で結構年かさの人がちらほら居た気がする。
鳴った瞬間に自分の後ろに音が突き抜けるような鋭い音を撃ちまくるドラムと、バキバキに低音を効かせながらグネグネ動き回るベースの音がすごく気持ち良かった。それに比べると、時折ヨレたり弾き違えたりするのが解ってしまうギターはちょっと弱かったように思う。「涙がこぼれたら」のリフが微妙にリズム隊と合ってなくてノリ辛かったり、ところどころで結構目立つミスをやっていたりした気がする。ただ、だからまずいと言う程でもなく、勢い任せに弾きまくる姿にはインパクトがあったし、出している音自体は格好良かった。特に「アカイヤミ」のギターは強烈だったと思う。
で、一番凄かったのは、やはりヴォーカル。曲と曲の間も落ち着きなく動き回り、曲が始まったら始まったで身体全体で激しくリズムを取りながら髪を振り乱して歌い叫ぶ姿には、ある種カリズマティックな雰囲気があったし、目には人を惹き付ける強い光(翳りかも知れないが)があった。歌の方も、腹の底から声が出ている感じではなかったものの、喚き散らしても汚く濁らない綺麗な声質で割とはっきりと発音しながら歌うのでとても聴きやすく、穏やかな歌い方をしている時の細かい歌い回しは予想以上に上手い。攻撃的かつ繊細、と言う二面性がはっきりと浮かび上がる歌い方で、特に「ジョーカー」や「アカイヤミ」のような感情の触れ幅が極端に大きい曲では歌の良さが最大限出ていたと思う。ヴォーカルの次に印象に残ったのはMCも担当していたドラムの人で、この人が叩くドラムにはひどく真っ当な良さがあった。俺がライヴで観たドラマーは割と特殊な部類に入る人が多かったからか、真っ正直かつ鋭くタイトなドラムの音の良さが余計にはっきり感じ取れたような気がする。それと、MCの終わりや退場する時に頭をきっちり下げて礼をするのも好印象だった。
場面によってはヴォーカルとギターがかなり崩した感じになってはいたが、アルバムの再現度はかなり高かったと思う。それでいてライヴならではのプラスアルファ(荒々しさ、細やかさ)が演奏全体に感じられたし、ライヴの空気を吸って曲が更に生々しく切実に迫って来るのもはっきり解った。それに、ヴォーカルだけでなくメンバー全員の居佇まいやパフォーマンスがすごく格好良かった。THE BACK HORNのライヴは初めて観たが、生で観る価値のあるバンドだと強く思った次第。と同時に、アルバムがこのライヴの空気を上手く掬い取って作られている事も実感出来た。ライヴの流れも良く、聴きたい曲が一通り聴けた事もあって、とにかく楽しかった。