ZAZEN BOYS@1/15、福岡DRUM LOGOS

向井秀徳ZAZEN BOYSの音楽性を「法被を着たレッド・ツェッペリンである。」と表現しているけれども、それはこのことと掛けてるんだろうか。
それはともかく、行って来ました。観るのは二回目だが、今日の方がよりはっきりとバンドサウンド然とした纏まりのある音になっていて良かったと思う。演奏したのはアルバムから全曲、そして次のシングルのカップリングになるらしい「たぬき」、そのシングルの表題曲になる予定と言う「半透明少女関係」(のイントロのみ)、ZAZEN BOYS以前の曲「性的少女」「六階の少女」。アンコールは「Delayed Brain」「Abstract Truth」の2曲だった。
始まってしばらくの間は、音の迫力が今一つと言うかこぢんまりと纏まっているような感じでどうも凄みが感じられず、こんなもんなんだろうかと内心首を捻りながら観ていたんだけれども、後半になるにつれてテンションが上がって行ったのかバンドサウンドがどんどん問答無用にブルータルなものになり、音の渦に引き込まれ、翻弄された。ナンバガと比べると、一触即発の緊張感やギリギリいっぱいに切羽詰った熱の高さや一点に向かって全員で衝動に任せて闇雲に突進するイメージはさほど無く、良く統制された状態で轟音を撒き散らす印象。恐ろしく金属質で鋭くてラウドでヘヴィメタリックなバンドサウンドだったが、音がただ大きく重いと言うだけでなくて、鍛え上げられた強靭さを音から強く感じた。全体としてはタイトにコントロールされた印象を受ける一方で、曲の作りや個々の演奏そのものはかなりフリーで、各人が結構遊びのフレーズを入れているようだったのはスリリングで、聴いていて面白かった。
アルバムよりも遥かに凶暴な音の鳴りが曲の複雑さや変則的なリズムを否応無くこちらに突き付ける事で、結果的に曲がより解りやすくポップになっていたように思う。だからなのか、アルバムで聴いた時に今一つ良さを感じなかった「The Days Of Nekomachi」や「Instant Radical」がライヴで聴くとめちゃめちゃ格好良く、元々好きな曲だった「Cold Summer」「Kimochi」、そして本編ラストの「自問自答」は更に威力を増していた。逆に「Usodarake」や「SI・GE・KI」はアルバムでの印象と劇的には変わらなかったが、これはこの2曲がライヴ序盤で演奏されたからと言うのもあると思う。
ただ演奏してゆくだけでなく、その合間合間に多めのMC(ZAZEN BOYS結成に当たっての決意や、4枚目にツェッペリンの「IV」みたいなアルバムを作るなどと言った事を10分近く話した)を入れたり、「Kimochi」で観客の中から二人ステージに上げて歌わせたり、向井秀徳が色々と変な動き(ソウルシンガーの真似をするように肩をすくめながら歌ったり、缶ビール持ってトランペット吹く真似をしながらスキャットして「ソロが弾けないので歌いました」と言ったり、「自問自答」でギターを置いてラッパーを真似た挙動をしたり、とにかく色々)をしたりしていたと言う事もあって、ユーモラスで飄々とした余裕を一枚残しながら、鍛錬の成果による凶悪な音を冷徹に叩き付けるようなライヴだったと思う。圧倒的と言うより、圧巻。
次の日風邪を引いた。