ヒント:ピンポン玉

やはり夕方、電車に乗った時の事。混んでいて座る場所が見つけられなかったため、4人掛けの座席の前に吊り革を握って立ったところ、俺の目の前の座席で一人の男子高校生が居眠りしている。いや、居眠りと言うレベルを逸脱して、豪快に寝ていた。何が豪快だったかと言うと、主に顎の角度と口の開き具合が。顎はこれでもかと言うくらい上を向いて座席の後ろにある窓に後頭部をもたれさせていてもうほとんど顔が真上を向いている状態、そして口はと言うと見事なくらいOの字に開けていた。抱えているバッグには都市部からは離れた場所にある進学校のロゴが入っていて、ああ疲れて帰る途中なんだろうなあと言うのは見て取れるが、それにしてもああまで見事な眠りっぷりと言うのはなかなか観られるものでもないので、つい眺めてしまっていた。また彼の顔が、いかにも口をOの字に開けて眠るのが相応しいような顔立ちで面白い。いや、特段整っていないとか言うワケでもなかったが、顔と寝相を見ると何故か納得が行くような感じの雰囲気で、まあ絵に描いたような「学校帰りの疲れた高校生」と言った風情だった。そのままマンガに出てきてもおかしくなさそうな感じ。で、俺はそんな彼に猛烈にやってみたいが肝心のモノが無いので出来ない、と言う行為についてしばらく考えていた。
今日ほど、自分が卓球部員でない事を後悔した日は無かった。