いろんな趣味の人がいます

本屋にて「Burrn!」(表紙:ブラック・サバス)を立ち読みをしていた時の話。
俺の隣に立ち、やはり雑誌の立ち読みをしていたらしい女の側に、すたすたと男がやって来た。気安く声をかけ、ぽんと肩を叩くところから、二人は彼氏彼女の関係らしいと見て取る。
男は女が読んでいる雑誌を覗き込み、
「うわ、そんなの聴くの止めろって。気持ち悪い」
と言ってのけた。雑誌見ただけで気持ち悪いってのは一体なんだろうかと思ってふとその二人連れのほうを見てみると、彼女が読んでいたのは「Fool's Mate」だった(一応説明しておくと、「Fool's Mate」と言うのは主にヴィジュアル系周辺の音楽を扱う雑誌である)。文句を言われた彼女は、軽く彼氏に反論をしつつも雑誌を置き、二人はそのまま連れ立って本屋を出て行った。
彼氏の外見はいかにもサーファー風と言うか、背も高くてそれなり以上に身体を鍛えていてノースリーブと言う体育会系兼理系っぽい男前。彼女の方も同じくまあスポーティな感じだし髪も短めかつ軽い色にまとめていて、あまりその手の音楽を聴く風には見えなかった。あの手の雑誌を読む人全員がゴスゴスした格好をしているなどとは流石に思わないが、ああ言う格好の人でも好きだったりするんだなあ、と思いながら二人が本屋から出て行くのをぼんやり眺めていた。
で、その後。本屋を出た俺は、タワレコに行った。これは特に目的があったりするわけでもなく、言ってみれば習慣と言うか回遊のような行動なんだけれども、タワレコに上るエレベータのところでばったり先ほどの二人連れと行き合わせた。さっきに引き続いて彼らを見るともなしに見ていたら、彼氏の方が4F(洋楽フロア)のボタンを押す。そして4Fに着くと彼氏は彼女の手を引いて歩き去って行った。俺も目当ては4Fだったので彼らの後に続いてエレベータを降りる。
V系を気持ち悪いの一言で切って捨てた彼氏が一体どんな趣味をしているのかが非常に気になったが、モテ度の高そうな音楽を選んでいるところを見てしまうと何となく落ち込みそうだったので、彼らの後を着けるのは止めて(後を着けてみようか、と言う思考がごく自然に出て来る辺りが間違っている気がしなくもない)、大人しくいつものようにメタルやらラウドロックやらの試聴機がある辺りに向かう。
どっちかと言うと日陰者であるところはV系もメタルも大差がないので、試聴しながら何とも微妙な気持ちにはなった。